一人、黙々と引っ越し作業。
段ボール一箱つめて40分。 ↓ 疲労 ↓ 休憩1時間 ↓ (最初に戻る)
・・・・・・効率悪。
コージ苑の体、疲労物質の分泌が人より多いに違いないよ。
コージ苑はついに見つけた。 エジプト米を(比較的)おいしく食す方法を。
数々の実験(5割以上失敗)の結果、 どうやら問題のニオイをきつくするのは、 炊いた米に含まれる水分であるらしい。
それならば、
揚げれば良いのだ。 徹底的に、カラリと、パリッパリに。
一人で油と格闘するのは空しく、そして暑い。 完成品を食べるだけ、などというオイシイ話を許すものかと、 仕事帰りで疲労困憊の七味屋氏を巻き込み、 夕食後に大規模な実験を開始した。
卵をつなぎにして、米とゴマを合わせ、 かき餅のように小さくまとめて揚げ油の中へ。
油がね、はねるんですよね。 米の水気で。 どこまでも憎いアイツである。
賞味した結果、ビールの肴に滅法いけるということがわかった。 よぅし、これで奴らは全滅だぜ、あと数キロあるけど。
<今日の反省点> 揚げ物を夕食後にするのはやめましょう。 (その後のどの渇きで死にそうになります)
2003年07月29日(火) |
シェフ、夏のオススメ |
朝、起き抜けにオレンジジュースを一杯飲む。 この暑い夏のこと、もちろんグラスには氷入りで、 ぐいっと一息に。
当然、グラスには氷が残ります。
まあね、元々水だから、捨てたところでどうってことはないんですが。
しかし、コージ苑は現在、 (一応)ミネラルウォーターで氷作っているわけで、 何となく勿体ない気がするようなしないような。
ということで、そのグラスはそのまま冷凍庫へ。
数時間後、再びのどの渇きを覚えます。
冷凍庫を開けます。
そこには、きっちり冷え切ったグラス。 そしてその中には、 かっちり固形化した氷(ほのかにオレンジジュース色)が。
そこに改めてジュースを注ぐわけです。 キーンと冷えてて、ああ夏って感じ。
もう一度オレンジジュースを飲むのも良いでしょう。 気分を変えてグレープフルーツでもいいかもしんない。 (トマトとかグレープは止めた方が良いです、経験上)
・・・・・・・ただの貧乏性じゃん。
大使館のお嬢さん方と昼食である。
今日はお試しで、新しいカフェに入った。 私たちの席にやって来たのは、 大学生の夏休みのバイトらしき若者である。 見るからにぎこちなくオーダーを書止め、 ぎこちない笑顔を残して厨房に戻った彼を見て、
バタヤン嬢「ちょっとかっこいいですよね、今の人。」
コージ苑「笑い方がかわいらしいですよね」
A嬢「背中がいいよね」
・・・背中・・・?
ハテナ目になった2人に、A嬢はこう言う。 「背中のみすぼらしい男はダメですよ」
さすがは「お姉さん」のA嬢、 目のつけどころが違います。 まさかちらっと見ただけのウェイターの、 「背中」をチェックするとは。
男性のここが気になる!っていうのは、 女性それぞれなのだということを、 改めて実感した夏のヒトコマでした。
ちなみにコージ苑は手に弱いんですがね、 って、そんなことはどうでもいいってば。
七味屋氏が、どうしてもスポーツしたいと主張するので、 森林公園に行った。 彼はローラーブレード持参、コージ苑手ぶら。
時間外なのにスペースを空けてくれた駐車場のおじさんが、 「2時間は開けといてやる」と言ってくれたので、 さあたっぷり運動するがよい、と動き出したものの、 5分でへたばる七味屋氏である。 そりゃあ、いくらなんでも早すぎ。
公園内は、同じく夕方のお散歩を楽しむ人々でいっぱい。 こんなにたくさん人間がいても、東洋人は珍しい。 すれ違いざまに「あれ何人?」と聞こえてくるのは、 ここでは既に日常茶飯事。 彼ら予想によって、様々な国のヒトにさせられたコージ苑である。
「・・・・・・」中国人ね、いいとこついてるよ。 「・・・・・・」韓国人か、まあ良く間違えられるけどね。 「・・・・・・」おお、当たりです、日本人ですよ私ゃ。 「・・・・・・」って、こら待てそこの若いの! 「ベトナム」って何じゃい! いくらなんでも離れすぎじゃ!!(いや、いいけどね別に)
※※※※※
駐車場に戻ると、係りのおじさんが待っていた。 疲労で瀕死状態の七味屋氏がローラーブレードを脱いでいる間、 隣接する動物園のフラミンゴをコージ苑が見ていると、 おじさんが「こっちこい」と手招き。 全身から「鳥さん見たい」オーラを発している子供だと思われたらしい。
ついでにオットセイも見せてもらい、 得しちゃったコージ苑である。 そんなコージ苑に、おじさんが聞いた。 「学生さんかな?」 「いいえ、大学の教師です」 ここで「おお、子供じゃなかったのか」と驚かれるかと思いきや、 「はっはっは、そうかそうかよしよし」的ノリで、 軽くかわされてしまった。
おじしゃん、あのね、 わたち本当に、大学で教えてるのよ?
コージ苑は音楽が大好き。 某大手ブランドのキャッチフレーズではないが、 まさに「No music, no life」なのだ。
そんなコージ苑は、 部屋にテレビがなくても我慢できるが、 ステレオがないとヤク切れの中毒者のようになってしまう。 いつだったかの引っ越しの時、 まだ何の家具も買っていないうちからステレオを買い込んで、 がらんとした部屋の中で音楽をかけているコージ苑を見て、 手伝いに来た友人があきれていたものだ。
でもまあ、そういう人って結構いるでしょ。
というわけで、今回の引っ越しでも、 予めステレオを買っておいてS国入りすることにした。
先週から、かなりの数の店を巡り、 ブランドや値段をチェックしまくっていたのだが、 今日の段階で決断して購入したのは、 パナソ○ックの超(でもないけど)小型コンポ。 値段のことだけ言えば、 L国製のとか、日本のお隣K国製とかあったのだが、 「何となく」母国の会社を選んでしまった。 年かしら(笑)。
ポーンと大きな箱を手にしたコージ苑に触発されたか、 同行の七味屋氏も、「電気のハコ」を買うことになった。 ただし、こちらはステレオではなく、 ギターのアンプとかいうもの(←良く知らない)である。 マーシャルとかいう(←良く知らない)、 その世界では有名な会社のものであるらしい。
彼は余程嬉しかったらしく、 自宅でひとしきり「ジョワーン」とか「チュイーン」とかやっていた。 根っからギター小僧なのだ。
余談だが、その時のコージ苑は「マーシャル」が覚えられず (自分から遠い分野には極力脳細胞を使わない主義)、 何度も「モーリシャス」と言って、 七味屋氏から、半ば本気のツッコミを受けていた。
※※※※※
アハメド・ラシッド『タリバン』 講談社 これ、例のテロの前に書かれたもの。 タリバンを長年追い続けてきたジャーナリストが、 「このままの状態が続くと・・・」と、 今後の展開を予想しているのだが、 それが今となっては恐ろしいほどに的確。 それにしても、米政府っていうのはつくづくジャイアンだな。
昨日買った扇風機は、 すっかりコージ苑の愛人と化してしまった。 「私もう、あなた無しでは過ごせないの(※)。」
ところで。 日本で普通に扇風機を買った場合、 期待される機能にはどんなものがあるだろうか。 まずは風力調節。 最低3段階は欲しいところである。 次に首振り機能。 やっぱりね、心地よい風は皆で分かち合いましょうよ。 そしてタイマー。 夜、回しっぱなしだと体に悪いからね。
これら3つの機能については、 いちいち店員に確認しなくても、 当然ついてくるであろうと予想されるものである。 日本では。
しかし、
ついてないのよ。 この国の扇風機には、 タイマーというものが。
大体が、「首振り機能付き!」「何と3段階風力!」って、 得意気に箱に書くなと言いたい。 この国には、それ程冷房器具というものが普及していないのか。
仕方がないので、個別のタイマー付きコンセントを買った。 まあ、使い回せる分、 こっちの方が効率的という話もある。 今いち釈然としないけれど。
・・・とね、ここまで文句たらたら書いてきましたが。 結局必要ないのだ、タイマーなんて。
何故かって、 結局つけっ放しなのだ、一晩中。 「お願い、ずっと一緒にいてほしいの(※)。」
(※) しかし夏が終われば恋も終わるのだ。 所詮はリゾラバである。←古い
遂に、
扇風機を、
買った。
(拍手拍手)
いきなりサッカー観戦をしてきた。
世の中、チャンピオンズリーグというものが行われているらしい。 そこに、L国の某プロチームも参戦している。 スポーツは参加することに意義があるのだ。
とはいえ、1年近く住んだ国に勝って欲しいのは人情。 今日の対戦相手はEU加盟で揺れる島、マルタである。 チャンピオンズリーグにしては、やけにマイナーなカードだが、 まあ良しとしよう。
試合そのものに関しては、 ナマはやっぱり迫力あるねとか、 スポーツ選手の体ってのは美しいよねとか、 所詮は月並みな表現しか出てこないボキャ貧のコージ苑には、 何も語る資格はない。
結果だけ報告すると、 L国は試合に勝ってリーグに負けた。 要は、得失点差で本戦出場の可能性を断たれたわけで、 まさに肉に夢中になってる隙に骨をぶった切られちゃったのだ。
それよりコージ苑的本日のMVPは、
選手が勢い余って蹴飛ばした結構な勢いのボールを、 パンチングでダイレクトにフィールドに返した、 名も無き観客のお兄さんだかおっさんだか、である。
L国のプロサッカーチームは、 彼をGKに抜擢すると良いと思います。
スポーツに全く明るくないコージ苑が、 数少ない知識を脳味噌の底から掘り起こしたところによると、
野球に「消化試合」っていうのがありますね、確か。
もう優勝決まっちゃったけど、 まだシーズンが終わってないから、 一応やんなくちゃいけなくて、 だから自分も相手チームもあまりやる気がない試合。
試合を観る方も、何だかやるせなくなっちゃう試合。
何が言いたいかといいますとね、
某氏が、先日の旅行の折りに、 南のL国からエジプト米を買ってきたわけです。 「長くないから、まあ美味しいだろう」と。
確かに、長くはなかった。 しかし、色がこころもち黒かった。
炊いてみると、これがまた臭いんです。 ちょっとそのままでは食べられないかな〜って位。 その日のメニューは洋風スシだったんで、もう最悪ですよ。
で、その米、まるまる5キロあるわけで、 今日もコージ苑は、炊飯器から放たれる臭いに、 何とも言えない脱力感を感じつつ、 ただ単に(両方の意味で)「消化」するためだけに、 スフィンクスの米を調理するのです。
(「米のにおいが消える!方法コンテスト」参加受付中)
あまりにも暑いので、日中窓を全開にしていた。
そして夕食後、ふと気づくとまたもや虫さされ。
おのれどこだ、どこにいる!と部屋を見渡すと、 天井に1匹、壁に1匹という具合に、 あちこちに蚊がご休憩遊ばしている。
それから小1時間、 ありとあらゆるアイテムを駆使しつつ、 後から後から出てくる「奴ら」を退治しまくったコージ苑である。
だからこの国では、動物愛護より先に人間愛護なんだってば。
今日の戦果は計13匹。
エンジェル先生に誘われて、動物園に行った。 日本の地元にある、サファリ動物園以来だ・・・って、 一体何年ぶりなんだコージ苑。
到着したのがちょうど正午過ぎだったからか、 動物たちもランチタイム。 おかげで撮った写真が、 「草を食べるゾウのお尻」とか、 「草を食べる馬の背中」とか、 「草を食べるバクの後頭」みたいなのばっかりになってしまった。
この動物園は、R市郊外の森林公園の一角にある。 公園といっても、 この国のどこにでもある森林のあるエリアを、 「ここからここまで」と線引きして公園と名付けただけ、 という感のあるシロモノだが。 敷地内にある湖が見渡せるレストランで、 人間の私たちもお昼御飯。
さて、腹ごしらえもしたし、 また動物たちを眺めて楽しむか、と思いきや、 今度は彼らのお昼寝タイムになってしまったようだ。 ちなみに、この時間帯にコージ苑が撮った写真は、 「昼寝するカバの背中」とか、 「昼寝するトラの背中」とか、 「昼寝するライオンのお尻」とか、 「昼寝するラクダのこぶ」とか、である。
唯一活動的だった動物といえば、 やけに芸達者なクマである。 許されているのかいないのか、 ここでは客が動物にやたらとエサを投げる。 彼らもそれを心得ているようで、 人間がオリの近くに集まってくると、 走り出さんばかりの勢いでやってくる。
そして問題のクマだが、 彼らの場合は後足で立ち上がって、 「エサキャッチ」の姿勢をとり、 おまけに前足を振って人間に愛嬌をふりまくのだ。
やつら、きっとサーカスに貸し出されているに違いない。
というわけで、予想外に楽しかった動物園であるが、 コージ苑は目下、 (七味屋氏が撮影したもの以外は)駄作揃いの、 30枚程度の写真をパソコンに落とすべきかどうか、 果てしなく悩んでいるところである。
蚊にさされました。
あしばっ蚊り、5蚊しょもさされました。
ふつ蚊蚊ん、あし蚊゛まっ蚊にはれていました。
きょうはだいぶよくなりました蚊゛、
蚊ゆくて蚊ゆくて、よるもねむれません。
せ蚊いじゅう蚊ら、蚊蚊゛いなくなればいいとおもいます。
暑い。 暑い。 とにかく暑い。
1ヶ月前には「夏なのに涼しすぎ」と文句をたれていたくせに、 今度は暑くて参っている。
人間って、本当に勝手な生き物だ。
・・・と、種族全体の性質に責任転嫁するコージ苑。
常々感じている疑問がある。
L国でもS国でも、 町歩きをしていると、 現地の言葉で呼び止められる。
そして、道を聞かれる。
私ら、見るからに「外人」だと思うんだけど。
あなた達の聞きたいことを、 私達が知っている確率は、 どう多く見積もっても1割いかないと思うんだけど。 (実際、今までに答えられたのは1回か2回しかない)
「そんなこと言うのは、日本人だからだ」 と言う向きもあるかもしれません。 確かに、日本では余程の地域に行かない限り、 道を聞くべき日本人を探すのに苦労はしない。
でもさ、
だったらせめて、自分に似た「欧米人」に聞けばいいじゃない?
「東洋人」をわざわざ選ぶ必要性が、 どうしても感じられないコージ苑でした。
※※※※※
荒俣宏『髪の文化史』 潮出版社 古今東西、髪の持つ呪術性や神秘性に焦点を当て、 アートネ○チャー協力の元に書いたという本。 相変わらずの博識っぷりには脱帽するが、 後書きのこのセリフ、 「自分が禿げるのではないかという、 そこはかとない不安から、この本を書いた」 というところには、同情の涙モノである。
エンジェル先生の誕生日パーティー。
作ったのは、カレーライス。
甘党の先生らしく、カレーのルーは、 「バーモントカレー 甘口」だった。
辛くないカレーで、ハピバースデー。
旅の疲れはダラダラして癒すに限るね。
※※※※※
出発前に注文していた本が届いていた。 小学生の頃に読んだ児童小説である。
柏葉幸子『霧のむこうのふしぎな町』 講談社文庫 あの「千と千尋」に影響を与えた、という評判がたって、 ここ最近人気が再燃したらしく、 当時はなかった文庫で販売されている。 しかし、解説でも書かれているように、 この際宮崎アニメは頭から追い払って読むべき。
柏葉幸子『地下室からのふしぎな旅』 講談社青い鳥文庫 個人的にはこっちの方が好みだった。 理由は、徹底してファンタジーだから。 私達の住む世界に隣接している、もう一つの世界。 佐藤正午の『Y』ではないが、 「あの時こうしていれば…」が、 物語の中盤におけるキーワードになっている。
時には、童心に戻ってこんな本を読むのも良い。
午後一番の飛行機に乗って、S国を離れる。
待合室で、座れる椅子を探していたら、 目が合ったおじさんが隣をあけてくれた。 本を広げて読み始めると、 興味津々でのぞきこんでくる。 そりゃね、開く方向逆だし、行は縦だし、 わけのわかんない文字が並んでるしね、珍しいかもね。
しばらくすると、おじさんは席を立った。 戻ってきたその手には、飴玉が握られている。 どうやらDFS(免税店)のレジから取って来たらしく、 コージ苑にも二つほど分けてくれた。 そのついでに、といった感じで、 「中国人か、日本人か?」と聞いてくる。 後は空港の待合室で交わされる、ごく普通の会話。
おじさんはスコピエから来たそうだ。 それがどこだか思い出すのに、3秒ほどかかってしまった。 どうやら、旧ソ連の国々を覚えたこの一年にかわって、 次はバルカン諸国の首都と配置を勉強せねばならないようだ。 人生、日々勉強である。 ちょっとつらい。
※※※※※
機内にて、隣に座ったのは国籍不明の男性だった。 別に隣り合わせになったからといって、喋る義務もない。 お互い、ごく静かに空の旅を楽しんでいたのだが、 機内食が運ばれてきたその時に、 小さな事件が起こった。
その男性とコージ苑が頼んだ飲み物は赤ワイン。 そのまま口にしようとしたコージ苑に向かって、 彼がいきなりこう言った。 「Tintin」(多分こんな綴りなんだと思う) その音に酷似した、日本語のある言葉を連想してしまい、 コージ苑は一瞬固まったのだった。
彼は自分の言葉が理解されていないのだと思ったのか、 各国語で言いなおしてくれたので、 その間に我にかえったコージ苑は、 笑顔と共に「乾杯」と言えたのだが…ああびっくりした。
やっぱり、人生日々勉強なのだ。 かなりつらいけどね。
※※※※※
ロバート・レーヴィン『あなたはどれだけ待てますか』 草思社 海外旅行に行って、 時間の感覚の違いにイライラしたことはありませんか。 ウェイトレスの対応が信じられない程遅かったり、 ガイドが約束の時間にロビーに来なかったり、 電車やバスが時間通りにホームに入ってこなかったり。 この本を読めば、そのイライラが少し解消されるかもしれない。
特にやる事も思いつかない、 まことに寂しい週末を送っているコージ苑である。
S国最後の一日を無為に過ごすのも悔しいので、 再度アンティークマーケットに行く事にした。
気のせいか、先週より店も人も多い会場を歩く。 オレンジ色の気泡ガラスに花の絵を描いた、 かわいらしいグラスと水差しのセットがあった。 新居にほしいと思ったが、 一度やり過ごして戻ってきた時には消えていた。 掘り出し物に躊躇はするべきではない。
この反省を元に、 オランダ製ミニチュアバイオリンを見つけた時には、 一応値段を聞いて即買い。 (実はバイオリンコレクターのコージ苑)
バルカンあたりには、ナイーヴアートというもんがある。 これはガラスをキャンバス代わりにして、 アクリル絵の具か何かで絵を描く手法で、 時々日本で展覧会も行われているそうだ。
コージ苑に声をかけてきたのは、クロアチアの画家だった。 実はコージ苑、このおっさんに前も声をかけられた。 数年前のことだ。 おっさんも当然覚えていないだろう。 そしてその時、彼の絵は買わなかった。 今回も「引っ越したら買うから」と逃れようとした。 すると彼は、一枚いくらで売っているワゴンの中から、 雪景色に教会が描かれている絵を取り出し、 ご丁寧にも裏にサインを入れて「プレゼント」してくれた。 おお、こりゃすいませんね。
しかしその後、 もう一度おっさんの店を通りかかったとき、 彼は別の日本人女性(2人連れ)に、 同じことをしていた。
おっさん、売上げ大丈夫かい?
※※※※※
帰り道、子供の集団に声をかけられる。 双方言葉を使用しての意思の疎通がままならず、 しばらく動物園のパンダ状態に甘んじていたコージ苑だが、 きりがないので彼らの写真を一枚撮った。 案の定、「お母さーん!」と駆け出していく彼ら。 やれやれ、と帰りかけたコージ苑だが、 いくらも行かないうちに子供達が追いかけてきた。 「日本じーん!」と呼びながら。 …直接的すぎて笑える。 もう一枚撮ってくれ、ということだったので、 喜んでシャッターを押した。 今度来るときにはプリントアウトして持っていってやろう。
※※※※※
立花隆『ぼくはこんな本を読んできた』 文芸春秋 この人って本当に知識の泉。←使い方違うし とにかく尋常でない量を読んでいる。 趣味と仕事、両者の間には、とてつもない距離があるようだ。
岩合日出子『アフリカ ポレポレ』 朝日新聞社 カメラマンの夫に同行し、 アフリカのとある自然公園で1年半を過ごした家族の記録。 4歳の子供の、あまりに泣かせるセリフが満載である。 しかし、アフリカでの生活に関する話より、 芸術家気質(らしい)夫の態度への不満が印象に残った感も。 夫婦の確執は、かくも恐ろしい。
実習は昨日で無事終了。 日本からきた実習生達は、今朝慌しく帰国した。
コージ苑はというと、飛行機の関係で帰るのは月曜日。 週末に何一つ予定が入っていなかったので、 少々うんざりしていたのだが、 ユッキー嬢からお誘いがかかった。
S国の在留邦人は約30名。 その中に、彼氏(S国人)と共にバイヤーの仕事をしている女性がいる。 何でも一年の半分をインドで過ごすのだそうで、 今日は彼の国のスパイスを使ったカレーをごちそうしてくれるんだそうだ。 コージ苑、インドカレー大好き。 聞いただけで汗がじわっと出てくるね。
行ってみると、家の中はエスニックで統一されている。 何だか…何だかかっこいいぞ。 自分もこんな部屋に住みたいな、とは(いつもいつでも)思うものの、 経済力と怠惰が邪魔して、結局実現することはない。 これまでも、多分これからも。 「お客様」として、時々お呼ばれして楽しむのが適当なところかも。
今日のホステス役の彼女は、 とんでもなく料理が上手だった。 たことキュウリの酢の物から始まり、 辛めに味付けたビーフン、タイの一夜干しを焼いたもの、 いんげんの白和えと次々に和食が登場し、 メインのカレーはインド風とアジア風の二種類。 どれもこれも美味しくて、箸も口も止まらない。 胃腸が限界まで広がってしまった。
お呼ばれって…ステキ。
※※※※※
林真理子『不機嫌な果実』 文芸春秋 J嬢が「この人の小説は2冊読んだらもう十分」と言っていたが、 うん、コージ苑もそう思う。 恋愛小説は性に合わないのよね。
柴門ふみ『幸福論』 PHP文庫 内容はとにかく、コージ苑は今更ながらあることを知った。 彼女のペンネームがポール・サイモンからきている(らしい)こと、 そして彼女の夫が嶋○作だということだ。
椎名誠『岳物語』 集英社文庫 私小説と銘打ってはいるが、 他の作品同様スピード感があって一気に読ませる。 前述の『幸福論』にも、子育てに関する記述があったが、 育て方は本当に人それぞれ、なのである。 自分が親になった時には、どんな方針で子供を育てるんだろうな。
半日旅行である。
ベケ教授宅の上階に住むマリ教授が、 ちょうど日本からゲストが来るから、と誘ってくれた。 行き先はブレッドとボヒニという名の、二つの湖。
こちらの人達はドライブといっても良く歩く。 自他共に認める運動不足のコージ苑、 本日の行程についていけるか、少々心配である。
まずはブレッド湖のほとりにあるカフェで腹ごしらえ。 ここはマリ教授ご推薦の、おいしいケーキを出すお店。 満を持して出てきたそれは、 生クリームとカスタードクリームがぷるんぷるんしながら、 パイ皮に挟まれているものであった。 食べてみると、確かにおいしい。 クリームだらけのくせに、甘さはある程度控え目。 うん、ここはまた来たい。
ブレッド湖の中央には島があり、 そこには5世紀からの教会がある。 時間があれば船で渡れるということだが、 今日は強行軍なので、次回に見送る。
ボヒニ湖畔はキャンプ場になっている。 さすがは夏休み、キャンピングカー専門の展示会のごとく、 木々の間に止まっている車車車。 キャンプも近代的になったもんだよ。 コージ苑はかつて、 「蚊がいなくて電気があるキャンプならしてもいい」、 という暴言を吐き、アウトドア派の友人を呆れさせた事があったが、 この分だとそんなの簡単に出来るのかもしれない。 やばい、条件変えなきゃ連れて行かれるぜ。←根っからインドア派
ボヒニ湖に流れ込む川を辿って森の中を30分、 轟音と共に目に飛び込んできたのは、 はるか上方から落ちる水の柱だった。 滝壷はエメラルドグリーンに輝き、まことに美しい。 周りが涼しいこともあり、しばらくの間ぼーっと眺める。
とにかくこのあたり、 川だろうが湖だろうが、水質が本当にきれいなのだ。 比較的浅いところでは、 透明な水の中に泳ぐカワマスの姿を見ることができる。 それがだんだん深くなるにつれ、 瑪瑙色からエメラルドグリーンへと色が変化する。 周囲の木々の色とあいまって、世界中が緑色に染まるようだ。
しかし、人間色気よりも食い気。 シューベルトなんぞを口ずさみながら、 コージ苑一行がとった旅行最後の行動は、 「レストランでボヒニ湖産カワマスのローストを食べる」だった。 さすが、きれいな川で育った魚は美味い。
※※※※※
林真理子『強運な女になる』 中公文庫 別に、今現在不幸だからとかいう理由で読んだのではない。 筆者の華やかな、少なくとも華やかに見えるライフスタイルには、 共感反発あこがれ妬みなど、それこそ様々あろうが、 「これが私だ、文句あるか」とばかりにきっぱり言いきってしまう、 そんな力がこの人にはあると思う。 だからといって、座右の書にしようというつもりもないが。
午前中をお土産の買出しにあてた。 ケンタロウ夫妻には、リクエスト通りスパイスを数種類。 誕生日を迎えたY先生には、特大のロウソクとロウソク立て。 これから何回か、S国に来ることになるであろう七味屋氏には、 A4版の詳細なロードマップ。 その他のお友達には、木で作った馬型のカードホルダー。 そして飲み会用に、S国産のスパークリングワイン。
みな、数日後には人の手に渡るものだけれど、 選んでいる最中は、確かにそれらは自分のもの。 全て買い終わった後は、まるでバーゲン巡りの後のような達成感。 こういうのを、擬似恋愛ならぬ擬似満足とかいうんだろうか。 あー、買った買った。
アパートの手付金その他を払うには、当然現金が必要である。 本当ならば、L国での預金から引き出したいところだが、 残念ながら支店がない(あるわけない)。 渋々、日本の口座から貯金を崩すことにした。
コージ苑は、日本の某銀行が発行している、 インターナショナルカードというものを持っている。 これはキャッシュカード拡大版のようなもので、 海外のATMを使って、日本の口座にあるお金を、 現地通貨にして引き出せるというエライ奴なのだ。
市内で一番大きな銀行に行って、ATMから現金をおろす。 一度に引き出せる限度額がやたらと小額のため、 目的の金額に達するまでに、連続5回手続きをする必要がある。 こんなにたくさんの金を一度に下ろしていると、 「アヤシイ奴」と思われないかしら、と余計な心配をしたりする。 違うのよ、これは私のカードなのよ〜、 という空気を背中にかもし出そうとしたが、余計な努力である。
びくびくしながらATMにはりついた結果、 手にした札束は結構な厚みがあった。 おおおおすんげえ、コージ苑ったらお大尽だぜ。
しかし、これをEURにして振り込まなくてはならない。 窓口に行って、両替してもらう。 返ってきたEURを見ると、あら不思議。 あんなにあった札束が、5枚になっていますことよ。 その薄さったら、一瞬計算間違いじゃないかと思った程だ。
さらにその5枚の札で、必要額を払い込むと、 手元に残ったのは悲しい程のはした金。 …何だかトランプのゲームで、 大富豪から一気に大貧民になった時みたいな気分。
※※※※※
伊丹十三『女たちよ!』 文春文庫 発行は1970年代。 この時代において、おそらく最先端を突っ走っていたであろう彼が、 第一章に置いているのは「スパゲティの正しい召し上がり方」。 今現在、ちょっと料理好きの人なら当然知っているようなことも、 30年前には本で語られる「オシャレ」だったのだな。 他にも、カルボナーラやアボガドが紹介されているが、 それらにいちいちつけられている「…というもの」という表現に、 言いようのないおかしみを感じる。 時代って怖いね。
アパートの賃貸契約を交わしてきた。 家主夫婦は今日からバカンスに出かけるということで、 午後の早い時間に不動産屋に行き、 その場で仮契約書に目を通して、細かい修正を加え、 正式な契約書を作成してサイン。
契約成立に伴って、 デポジットその他の経費を払う必要が生じた。 日本の敷金礼金のようなもんである。 それが家賃3ヶ月分。 プラス、エージェントに支払う仲介料が1ヶ月分。 さらにプラス、前払いで来月分の家賃。 占めて、家賃の5ヶ月分を今週中に払わなければならない。
コージ苑が1年間貯めたお金、これでパア。 つらい…
※※※※※
メアリー・W・ウォーカー『処刑前夜』 講談社文庫 犯罪記者である主人公の女性がかつて取材し、 犯人の死刑が確定した連続殺人事件。 処刑の日が近づいたある日、一つの疑惑が生まれる。 死刑判決の決め手となった殺人事件の犯人が、 もしかして別人かもしれない、というのである。 …とまあ、こういう筋書き。 アメリカのこの手の推理小説には一つのパターンがある。 主人公が女性であり、 彼女は離婚暦があり、 すでに自立している子供は大抵娘であり、 本人は現在独身であり、 ばりばりのキャリアを持ち、 現在進行形で恋人がいる(彼も犯罪関係の仕事に従事している)。 何冊も読んでいると飽きてくる設定だが、 決まったパターンの中で物語を楽しむのは安心できるのかもしれない。 水戸黄門のように。
見つかりました、運命の部屋。
朝早く、ティンカーベル嬢から電話が入る。 頼んでおいた不動産屋では、新しい物件はないとのことで、 心配した彼女は、広告雑誌をチェックしたんだそうだ。 この雑誌、週2回発行されるもので、 土地から部屋から中古携帯電話まで、 様々な「売ります貸します」がギッシリ掲載されている。 彼女は、その中の2つの物件に目をつけたというわけ。
午後イチで、問題の部屋を見に行く。 雑誌に掲載された物件を押さえたかったら、 発行日の午前中には連絡しないと間に合わないのだそうだ。 …世の中、そんなに多くの人々が一時に部屋を借りるんだろうか。
2つの物件は、同じ地区の同じアパート群にあった。 大学から歩いて5分の所にあるその地区は、 中心街に近い割に緑が多くて静かな環境だということで、 ちょっとばかし裕福なご家庭に人気の町。 従って、そこで貸し物件が出るのは珍しいんだそうだ。
1つ目は、川沿いの道から一本入った場所。 エージェントが待ちかまえていた。 アパートは築20年。 古い建物の多い欧州では、これでも新しい方である。 案内された部屋は、最上階のワンルーム。 窓が大きく南向きなので、日当たりの良さがまず目に付いた。 いわゆる「屋根裏部屋」なので、 普通のものよりも若干天井が高く、 その特性を活かしてロフト付きにしている。 面積は、全てあわせて30m2。 「一階部分」だけを見ると、はっきり言って相当狭い。 日本のワンルーム並みである。 それでも、設備その他を考えると、 少々高めの家賃も、相場からするとお値打ち価格である。
2つ目の部屋は、現在改装工事中。 建物こそ違うものの、最上階にあるところや部屋の構造など、 殆どが前の物件と同じ条件。 しかし、気合を入れて改装しているのか、 ロフトへ登るのに、手すり付きの螺旋階段をつけたり、 キッチンには20本分のワイン棚があったり、 果てはエアコンまでついているというご丁寧さ。 それだけに家賃も高い。 ティンカーベル嬢が交渉してくれたのだが、 1EURも値下がらなかった。
確かに、2つ目の部屋は素敵だった。 しかし、給料の6割以上を「住」に費やすのはごめんだ。 いくらきれいな部屋に住んでいても、 食事や遊びを限界まできりつめて、 ぎりぎりの生活をするなんて、コージ苑から見ると馬鹿げた話。
ということで、1件目の物件に決めることにして、 エージェントに連絡の電話を入れた。 交渉の末、洗濯機とベッドをつけてもらえることになり、 正式な契約を今週中に結ぶように手配した。
やれやれ、これで住所不定のまま仕事を始めなくて済むのだ。 何より、住居契約がないと就労ビザがおりなかった。 税金の問題があるとかで、大抵の家主は契約書を書きたがらず、 それが部屋探しを困難にしていた原因でもあった。 今回借りることになった部屋の持ち主は、 親戚が日本で働いているとかで、 コージ苑に貸すことや、契約書の点では異存はなかったらしい。 もしかして、コージ苑けっこうラッキー?
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歴史探検隊『人は権力を握ると何をするか』 文春文庫 単なる雑学本として読んでみた。 権力者というのは、わがままが許されてしまう、 というか、わがままを通してしまう。 一般人であれば、周りから変態呼ばわりされて終わるようなことも、 王様となると止める人間がいないので、始末が悪い。 振り返って我が身を見ると、 コージ苑は決して禁欲的な生活を続けられる人間ではないので、 権力などというものは持たないに限るな、と思った次第である。 (それ以前に権力を持てるようになる要素がないのだが)
朝、ちょっとがんばって早起きして、 週末ごとに開かれるアンティークマーケットに出かける。 アンティーク、というと聞こえは良いが、 その半分はガラクタすれすれの物である。 しかし、コージ苑はこういうの、大好き。 端から見るとアヤシイ程何回も往復し、 結局何も買わずに帰ってきた。
さてくつろくぞ、と着替えた瞬間、 モーナさんからドライブのお誘いがかかる。 午後も数時間経った頃に出かけたのは、 車で30分ほど行ったところにある、Krka川の源流。
ちょっとした鍾乳洞になっている水源は、 暗くてひんやりしており、絶好の避暑スポット。 奥のほうにぽつんと設置された水槽の中には、 トカゲぐらいの大きさの「サンショウウオ」がいた。 闇の中で生まれ育っているので、 彼らの目は退化し、体の色は真っ白。 しかし、観光客のために水槽にライトを当てつづけていると、 やはり「日焼け」して黒くなってしまうそうで、 数ヶ月ごとに選手交代するのだそうだ。 色白美人も大変。
付近一帯は湿原となっており、 車の通れる道はないので、歩いて散策する。 木立の中に入ってみると、 思わぬところにナデシコが咲いていたりして、中々楽しい。
湿原地帯にある小さな町の中心には小山があり、 頂上には教会があった。 登ってみると、付近の町が一望できる。 その中でも一番眺めの良いところは、墓地になっていた。 かつて『南仏プロヴァンスの12ヶ月』だったかで、 「死者はこれからずっとひと所にいるんだから、 町で一番景色の良い場所は彼らのものなんだ」というくだりがあった。 永遠となるとさすがにウンザリするだろうが、 こんなにきれいな場所であれば、 飽きが来るのは大分経ってからに違いない。
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寺山修司『さかさま世界史 英雄伝』 角川文庫 マヤコフスキーの言葉の引用。 「もしも心が全てなら いとしいお金は何になる?」 いくら守銭奴とののしられても、 この一節だけで、読んだ価値があろうというものだ。 増してや「寺山節」とでも言うべき人物評はどれも、 にやにやしつつ納得させられてしまう。
塩野七生『銀色のフィレンツェ』 朝日文芸文庫 イタリア三部作の、二作目。 (といっても、この人の著作は殆どがイタリアものだが) ベケ教授に言いたい。 どうしてこれ一冊だけ置いているのですか。←欲求不満
前日から続くアパート絡みの鬱々気分は、 七味屋氏との電話で解消した。 やっぱり、一人で考えていても同じ所をぐるぐるするだけで、 良いアイディアは出ないもんだね。
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灰谷健次郎『太陽の子』 理論社 あまりにも有名な灰谷作品。 小学生の頃、図書館で借りた覚えがある。 その時にも悲し〜い気分になったものだが、 大人になった今、これにあたってみると、 悲しいというより哀しい気分になるのだ。 (ニュアンスで分かってください) 昨年のいつだったか、作者のエッセイを読んだ。 その内容を踏まえて見ると、 ふうちゃんの父親の姿には、作者の兄が投影されているし、 沖縄滞在の頃に見聞きした体験が、 この作品にドスンと据えられているのが感じられる。
今日もまた部屋を見に行った。 問題の物件、立地は最高である。 市場のすぐ近くにあり、中央駅へも歩いて行ける。 家賃も条件内におさまる。 大学に通うのも徒歩圏内。 窓も大きく、眺めも良い。
しかし、自分でも不思議なほどに気が乗らない。 後でつらつら考えてみるに、 原因はあの部屋の「気」だろう。
といっても、別にコージ苑がオカルト趣味なわけではない。
そこには、家主の母親が長年住んでいたそうだ。 そして部屋は、昨日空いたばかり。 …と聞いた瞬間、「『空いた』ってつまり…」などと思ってしまったが、 何が原因にせよ、そこは問題の本質ではない。
ある人が長い期間住んでいた部屋には、独特の雰囲気が漂っている。 それは、まるで「今ちょっと留守にしています」、 とでも言いたげな、自らの存在を主張する空気である。 コージ苑が知るはずもないおばあさんの姿が、 ソファやら風呂やら台所やら、 果ては皿の一枚一枚にうつしだされるような、 そんな「気」を、この部屋は持っていた。 そしてコージ苑には(仮にここに住むとして)、 その「気」を塗り替えられる自信も気もないのだ。
気に入った物件というのは、中々見つからないものだ。 まあ、来週があると気楽に考えて…いたはずが、 やはり気にかかっているのか、寝付けなかったコージ苑だった。
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眠れない時は、潔くあきらめて本を読むに限る。 お茶つきで。
真保裕一『震源』 講談社文庫 気象台から始まる、男ばっかりのハードボイルド。 きっと次のページでは、と期待してめくっていたら、 わくわくするヒマがないままに終わってしまった。 しかも、最後の最後で主人公が誰だかわからなくなってしまったという、 履歴書の趣味欄に「読書」と書く人間にあるまじき失態。 なぜここまでガックリきたかというと、それは多分、 裏表紙の「事件の裏に渦巻く国家的陰謀!」というのに、 徹底的に期待を持ってしまったものと見える。 こういう人間がCDの「ジャケ買い」とかするんだ、きっと。
ベケ教授宅には、広い庭がある。 リビングの窓から手を伸ばせば届くところに、 一本のアンズの木があり、 まさに今現在、黄色い果実がたわわに実っている。 ここ数日の、コージ苑およびJ嬢の朝食である。
おそらく、ベケ教授が帰ってくる頃には、 一つも残っていないことと思われる。 ごめんなさい教授、果物泥棒は私達です。 ああ、おいしい。
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部屋探しに頼もしい助っ人が登場した。 今年で大学の日本語科を卒業するティンカーベル嬢である。 件の不動産に知り合いがいるとかで、 電話連絡をとってくれたり、条件を絞り込んでくれたり。 今日も一つ、部屋を見に行った。 大学から歩いて10分程度の、ごく普通のアパート。 中はきれいで、台所が大きく新しいところが良い。 しかし、これといった決め手がないので、返事は保留。 恋人も部屋も、選ぶときに「決め手」というのは必須である。
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北杜夫『大日本帝国スーパーマン』 新潮社 以前読んだのは、小学生の頃だったか、中学だったか… その時には「ふーん」で終わらせた話であったが、 今読み直してみると、収録3作はいずれも、 異文化に接触したときの人間の感情を扱っている。 傑作かと問われれば「違う」と言うだろうが、 一度読んでみる価値は、確かに持っている本である。
水曜日になると、早くも週末気分のコージ苑である。 (いくらなんでも早すぎ)
実習後、数人連れ立ってアイスを食べに行く。 もうすぐお母さんになるモーナさんお勧めのカフェ。 メニューには、王道バニラからチェリーにピーチ、 中にはピスタチオなんていう変り種も。
ところでコージ苑は、ある「決まりごと」を持っている。 初めて入るお店では、 ケーキやアイスはチョコレートを選ぶのだ。 別に、それでその店の味が分かるというわけではないが、 数をこなしていると、少しずつ味が違うのが分かるようになり、 ほほう面白いなあ、などと感心している内に、 何となく出来てしまった「ルール」なのである。
というわけで、本日も注文はチョコレートのアイス一点張り。 涼しげなガラスの器に盛られてきたそれは、 日本のアイスクリームよりも粘度が高く、 甘さよりもカカオの香りが勝っていた。 元々、ビターが大好きなコージ苑なので、これは嬉しい。 よし、一軒ご贔屓を見つけたぞ。
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田口ランディ『縁切り神社』 「本の雑誌」などでよく書いているが、 今まで何となく読んでいなかった作家である。 (こんなの多いな、コージ苑) 今ひとつ入り込めなかったのは、 短編集だからか、好みに合っていなかったからか。 いずれにしてもこの人、エッセイとかルポとか、 とにかくノンフィクション書いた方が面白いんじゃないか、 とはコージ苑の勝手な印象。
なぜか研究室にあった「名づけ事典」を見ていた。 子供の名前をつける時の注意点から実例まで、 それはまさに「事典」であった。
名前には流行というものが当然ある。 昨今は懐古趣味的なものが全盛らしいが、 その本は少し前に出版されたものだったので、 カタカナにしても通用する名前が幅をきかせていた。
例えば「斗夢」君。 例えば「麻里絵」ちゃん。
親の好き好きだとは思う一方で、 見まごう事無き東洋人の彼らが70年後、 「トムじいさん」「マリエばあさん」と呼ばれるという事実は、 他人事ながら微妙に同情を誘う。 ま、「皆で呼ばれれば怖くない」理屈なんだろうけど。
そんな中で、コージ苑はものすごい名前を発見した。 その女の子の名前は、
留美衣(ルビー)ちゃん。
これはルビー・モレノあたりにあやかるつもりだろうか。 しかし、この事典のスゴイ所は別にある。 留美衣ちゃんに隣接した男の子の名前。 それは、
麦造(むぎぞう)君。
扱っている名前の幅広さをアピールしたかったのだろうが、 それにしても…
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林真理子『美女入門PART2』 マガジンハウス 女っぷりの上げ方は人それぞれ。 なまけんぼうのコージ苑には到底真似できないが、 この人のオシャレに対する情熱には脱帽の一言。 ただ、一冊まるごと読みつづけるよりは、 掲載雑誌の、毎号のお楽しみにした方が賢いかもしれない。 (一気読みする自分が悪いという説もある)
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