教育実習が始まった。 今回の実習生は4人。 それぞれがひとつのクラスを受け持ち、 2週間のコースを教える。 実習生はもれなく全員が緊張しており、 授業準備に余念がない。
コージ苑も2年前の春、実習生としてこの国に来た。 丸ごと一つのクラスを担当するのはその時が初めてで、 毎日教案をひねり出すのに精一杯。 ろくに観光もしなかったのを覚えている。
授業には毎回、この大学の講師陣が見学にやって来て、 終了後には時にやさしく、時に厳しい批評が待っている。 何もとって食われるわけではないのに、 顔がひきつるほど緊張したコージ苑だった。
あれから2年後の今、自分が批評する立場に立っている。 実習生たちの授業を見ていると、 なんだか不思議な気分になってくる。
そして授業の後。 やはり不思議な気分を覚えつつ批評する。 あー、私ごときが彼女達にあれこれ言っていいんだろうか、 自分もろくな授業できないくせにじたばたうおおー、 …という心の内の葛藤を隠しつつ。
もしかして、私の授業を批評していた先生方も、 同じようなことを考えていたんだろうか。
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宮部みゆき『模倣犯』 小学館 いわずと知れた大大ベストセラー。 あまりにも売れているので、かえって手が出なかったのだが、 ベケ教授宅に上下巻そろっているのを発見したので、 これを機会とばかりに読んでしまった。 今さら感想を述べるのは何なので、 気になったことを一点だけ。
中居君がやったのは「ピース」ですか。 (すみません、通俗的で)
これから来る人間もいれば、 日本に帰る人間もいる。
交換留学で1年間、このS国に滞在していたラヴ嬢、本日帰国。 国際列車と飛行機を乗り継いで、 日本にたどり着くのはほぼ2日後だそうだ。 海外が身近になったとはいえ、 メジャーどころ以外に行くには、 まだまだたくさんの時間が必要だ。
笑顔で手を振って列車に乗り込んだラヴ嬢にとっては、 この国はきっと、楽しい場所だったのだろう。 自分にとってもそうなることを祈りつつ、 彼女を見送ったコージ苑であった。
2003年06月28日(土) |
人間の体型に関する一考察 |
最近、友人に妊婦さんが多い。 彼女たちは当然、大きなおなかを抱えて大儀そうだ。 あの、ぽっこり突き出た空間の中に、 新しい「ヒト」が入っているんだな〜。
今回の滞在における居候仲間のJ嬢は、 イマドキにしては破格に小柄である。 そしてぽきっと折れそうに細い。 あの体のどこに、どういう風に内臓が配置されているのか、 同じ人間として不思議である。
町歩きのさなか、ガラスに映った自分を見た。 何だかオバサン体型になってきた、気がするのは気のせいだろうか。 今日の服装のせいもあるかも、 などという言い訳を自分にしても空しいだけである。 やっぱりエクササイズの一つでもしなくてはだめなのか。 放っておくと、どんどん自堕落になる自分を知り尽くしている私はしかし、 この場で「運動するぞ」と決心したとして、 それを果たして実行できるかどうかは甚だ疑わしい、 ということも知っている。←まわりくどい
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小川洋子『妊娠カレンダー』 文芸春秋 大学時代に一度読んだ記憶があるが、 細部をすっかり忘れていた。 表題作「妊娠カレンダー」の、最後の一文がちっとばかし怖い。 「ローズマリーの赤ちゃん」なんかもそうだけど、 やっぱり自分の中にもう一つ命があるっていうのは、 時として恐怖心を呼び起こすものなのかしら。
大学時代の同期で、 今はS国L大学の講師であるユッキー嬢が、 アパート探しに協力してくれるという。 ありがたくお願いし、昼食後に不動産屋に行ってみた。
今日は金曜日。
ごく普通のビル(ちょっとクラシック)の中にある、 ごく普通の不動産屋。 ノックをして中に入ると、広いフロアに女性が二人。 静かに回る扇風機。
・・・もしかして流行ってない?
と思いきや、受付らしき一人の女性曰く、 「今日は金曜日だから、ほとんど全員が休暇をとっている」
一頃頻繁に耳にした「ハナキン」に、 まさかここで再会するとは思わなんだ。
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桐野夏生『OUT』 講談社文庫 作品全体に流れる暗〜い雰囲気が、 一人で過ごす異国の夜にぴったり・・・なわけあるかい! 主人公の女性が、とにかく滅法強い。 サスペンス、アーンド、ハードボイルド好きなあなたにお勧め。
林真理子『南青山物語』 角川文庫 打って変わって、こちらはあくまで軽いエッセイである。 エッセイに登場するネタに、 今や遠くなったバブル期(よりちょっと前かな?)を感じる。
重松清『定年ゴジラ』 講談社文庫 「うまい」と評される重松清の著書、初挑戦。 コージ苑ごときが生意気だが、なるほど上手い。 泣かせる。 というか、じわっと迫ってくる。 自分が60過ぎた時には、一体どんな町に住んでいるのだろう。
2003年06月26日(木) |
セットにはつけられません |
午前中、大学にて書類提出。 ・・・のために、複数の部署に行き、 その度にたらいまわし。
ベケ教授宅には、コーヒーというものが存在しない。 カフェイン中毒のコージ苑には、少々辛いものがある。 今日で既に3日間、あの美しい黒い液体を口にしていない。 ああ、飲みたい飲みたいと歩いていると、 まるで魔法のように目の前に出現したのはマクドのゴールデンブリッジ。
昼食がまだだったので、セットを注文する。 お値段は日本円にして400円弱、ここらの物価を考えると少し高い。 セットのドリンクは、と聞かれ、 待ってましたとばかりにコーヒーを注文した。 すると店員さん、情け容赦なく「だめです」と返事をするのだ。
コーヒーぐらいOKにしてよ、スロベニアのマクド・・・
目が覚めたら、午後1時。 ああ、良く寝た。
ベケ教授宅には、日本語の本がたくさんある。 しかもありがたいことに、 学術書ばかりでなく、小説や料理本、果てはお嬢様所有のマンガまで、 暇つぶしにはもってこいのラインナップ。 本棚から適当に取り出す。
だらだら読んでいるうちに、またもや眠くなるコージ苑。 意識がとんだ、と思ったら夕方だった。 さすがに空腹だったので、夕食を作って食べる。
そしてシャワー。 そしてしばらく読書。 そして就寝。
時差ボケがないというのに、 徹夜ボケをしていては意味がない。
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山崎えり子『節約生活のススメ』飛鳥新社 数十年かかる住宅ローンを、7年で終えたそうだ、この人。 その驚異の節約方法を読んでみると、 確かに感心するし、自分もやってみようかしらと思うのだが、 今まで実行に移せた例は一度もない。 だから、最近ではこういう類の本にあたる時は、 オハナシとして純粋に楽しみながら読み、 その中で一つでも豆知識がつけられればラッキー、と思うことにしている。
「夏至の日に眠ってはいけません。 もし眠ったら、その人は一年中眠気が覚めません。」 L国では、こんなジンクスがあるらしい。
コージ苑が昨日から徹夜しているのは、 別にこの迷信を信じているわけではなく、 単にギリギリまでやらなかった仕事があったからである。 それでも、この保険は適用されるのだろうか。
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早朝、スロベニアにむけて出発。 送ってくれた七味屋氏ともども、空港で眠い目をこすった。 飛行機に乗り込んだとたん、襲ってくる眠気。 機内食をぶっちぎる程深い眠りにおちた。
乗り継ぎを待っている間、プラハの空港でもぐっすり。 本場だというのに、Budを飲む気力も失せている。 よくもまあ、乗り遅れなかったもんだ。 これじゃ、何のために徹夜したんだかわからない。 思いっきり眠いじゃん。 ジンクスはどうなった。←結局信じている
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無事に到着したスロベニアの空港では、 K先生が次女のニナちゃんと待っていてくださった。 思わぬ外出に、小さな彼女はすっかりご機嫌。 周りに笑顔をふりまき、空港中の人気者と化していた。 しかしその直後、ベビーシートが気に入らず泣きだすニナちゃんなのだった。 (オトナ扱いして欲しい年頃なのね)
今回の滞在中お世話になるのは、 日本語科のボス、ベケ教授の邸宅である。 本人は現在日本へ出張中のため、 主人不在のまま、3人の日本人が居候することになる。 後の二人は、H大院生のN子さんと、T大院生のA田君。
とりあえず荷物を置いた後、大学へ。 簡単に今回の仕事の打ち合わせを行う。 ついでに、当座の生活費をもらった。 出費がかさむ時期なので、これは助かる。 ケチケチ生活して、余らせて帰ろうっと。
ということで、帰りに食材を買い込むべく、 ショッピングセンターに連れていってもらった。 遠めにも大きな建物には、「INTERSPAR」の看板。 SPARって、あのSPAR? ・・・でか。 日本ではどう贔屓目に見積もってもコンビニの脇役なのに、 ここでは堂々たる規模を誇っているようだ。 欧州内で、時々「EUROSPAR」っていうのを見かけるが、 同じSPARでも、複数のグループが存在するのだろうか。 モー娘みたいに。
晩御飯は、K先生宅でごちそうになる。 昼寝が終わって元気回復のニナちゃんと、長女のアナちゃんが、 ダブルで遊ぼう攻撃をしかけてくる。 一緒になって「コニーちゃん」の真似をするのは、 この年になってみると、少々つらい。 ハッ!と我にかえった瞬間がなんともいえず。
ベケ教授宅に戻ったら、速攻でバッタリ寝てしまうかと思いきや、 興奮しているのかなかなか寝付けない。 まさか、夏至の「対眠気保険」が効いてるんじゃ・・・
いやだ、こんな効きかた。 (眠い時には素直に寝せてくれ)
L国は、本日全国的に夏至祭である。 例年だと、雨が降るらしいのだが、 今日は抜けるような青空が広がっている。 人々はきっと、自然たっぷりの田舎町で、 夜通し歌とダンス、ビールにチーズを楽しむのだろう。
なのにコージ苑、何が悲しくて一人で荷造り。
吉○家顔負けの、牛丼を作った。
…行ったことないけど。
話題が乏しくて申し訳ないが、 夏至直前のL国である。
夏真っ盛りである。
今日は15度を割るか割らないか、である。
何でこの季節に、長袖を二枚重ねなくてはならんのだ。 (とっととスロベニアに行きたい)
夏至直前の週末である今日、 旧市街の中心で、花の市場が開かれている。 夏至祭の現場にいられないコージ苑だが、 せめてこれだけでも、と出向いてみた。
市場は、花で埋まっていた。 L国の夏至に必須のアイテムは、草で作った冠である。 男性用には、柏の葉で作った巨大な冠。 女性用には、(多分)菖蒲の葉で編んだ華奢な冠。 他にも、野の草花をアレンジした花束や、 麦の穂で作った飾り物など、 日本ではちょっとお目にかかれないようなものがいっぱい。
中央に設置されたステージでは、 民族衣装を身にまとった男女が、 フォークダンスを踊っている。 陽気な音楽に、皆心が浮き立っているようだ。 昼間からすっかり酔っ払いのおっさんも多い。
L国の夏は雨が多く、 夏至の日も、ほぼ毎年雨が降るらしい。 その中で、人々は夜通し歌い踊り、チーズとビールで夏を祝う。 聞くところによると、夏至の夜は決して寝てはいけないそうだ。 寝てしまうと、その人は一年中ずっと眠くなってしまうとか何とか。
今日も、突然雨が降ってきた。 あわてて売り物にシートをかける商売人たち。 コージ苑も、傘をさして撤収。 今日の収穫は、アシの茎を編んだランチョンマットを4枚と、 先述の、女性用の冠。 気分だけは思い切り味わっている自分なのだ。
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森博嗣『女王の百年密室』幻冬社 これ、シリーズになるのかしら。 …というより目にとまったのは最後の註。 「これは書下ろしです。原稿用紙911枚(400字詰)」 という情報、出版界では普通に入れられるものなのか? 作者本人が書いたのなら、 ここにこそ彼のカラーが見えている気がするのだが。
今学期の成績を出した。
ふっふっふ、学生諸君。 君たちの明日の運命は、 今コージ苑のノートの中にあるのだよ。
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リズ・ダベンポート 『気がつくと机の上がごちゃごちゃになっているあなたへ』草思社 はい、言われるまでもなくコージ苑の机の上はごちゃごちゃです。 辛うじて作業スペースは残しているものの、 両サイドには今にも崩れそうな書類の山。 ここに書かれている整理法を全てやろうと思うのは大変だし、 基本的にビジネスマンを対象としているようなので、 自分の状況にあてはまらないこともある。 しかし、スケジュール管理法や机の上のレイアウトなど、 参考にするべきところは多い。 早速実行。 …引っ越したらね…
柳田邦男『マリコ』新潮文庫 日米間の戦争がはじまる前、外務省のある部局では、 こういう暗号が使われていた。 「マリコは病気だ。悪くなるばかりだ」 日本に対するアメリカ側の態度を示す「マリコ」は、 一外交官とアメリカ人女性との間に生まれ、 両国間の「かけ橋」となるべく育てられた少女の名である。 長じて、彼女はアメリカで政治活動に身を投じることになる。 …という粗筋を聞くと、 なんだかその後の華々しい活躍が思い描かれるようだが、 実は彼女の人生は、波乱万丈ではあるものの、 決して人が羨むような幸せなものではない。 早くに父を亡くし、弁護士である夫は幾度も選挙に敗れ、 最愛の長男を自殺で失う。 そこにあるのは、外交官の娘という、 一見恵まれた環境で育ったように見える彼女が、 幾多の悲しみや苦しみにひたすら耐え、乗り越えてきた姿だ。
Y先生と一緒にカフェにいた。 そこはコーヒー専門の店で、 少々高めのお値段のせいか、いつでもゆったりすいている。 コージ苑はカフェモカ、Y先生はコーヒーシェイク。
そこへS教授がやってきた。 「のどが渇いたわ」と言う彼女が注文したのは、 どうみても潤い少な目のエスプレッソ。 足りるのか?と怪訝に思ったコージ苑だが、 まもなく店員が追加でワインを運んできた。 昼間からかよ教授、というより…
コーヒーとワイン。 やってみたらおいし…いのか?←古すぎ
言ってみた。 「コーヒーとチョコ、ワインとチーズという組み合わせはよく聞きます。 でも、コーヒーとワインという人は初めて。 きっと教授は、チョコとチーズを一緒に食べるのが好きなんでしょうね」
彼女は得意満面で答えた。 「私の人生に決まったルールはない」
彼女の大らかで大ざっぱで、 時間にルーズで約束にルーズで、 しかし憎めない性格の謎が解けた瞬間だった。
2003年06月17日(火) |
3つのオレンジへの恋 |
夏になり、国立オペラ劇場には客演が相次いでいる。 今月頭から行われているのはオペラ週間。 ロシアのボリショイオペラが来ているので、 チケットを取って行ってみた。 演目は「3つのオレンジへの恋」。
第1幕。 王様は悲嘆にくれている。 王子がヒポコンデリー(心気症)なのだ。 後継ぎがこんな風では、彼の王国はずるがしこい姪にのっとられてしまう。 どうにかならんか、と悩む王様、 かつてある医者に聞いたことを思い出した。 「王子様を治す唯一の方法は、彼を笑わせることです」 そこで国随一の道化、トルファルディーノを呼び、 盛大な祭りの開催を依頼することにした。
それを聞いた姪の王女と、彼女サイドである首相は気が気でない。 王子がもし笑うようなことがあれば、 彼らの野望は水泡に帰してしまうのだ。 そこへ、魔女フェタ・モルガナの手下がやってきた。 「大丈夫。彼女が祭りに来ている限り、王子は笑いません」
所変わって、炎と魔法の国。 トランプに打ち興じているのは、2人の魔法使い。 この2人、実は王様サイドと王女サイドに分れている。 王様サイドについている魔法使いは、どうしてもフェタ・モルガナに勝てない。
第2幕。 トルファルディーノは頑張っている。 王子を笑わせようと、自分の持ちネタを披露している。 しかし、王子は枕を抱えて溜息をつき、 「肝臓が痛い、腎臓も痛い」というばかり。 何故なら、そこにはフェタ・モルガナがいるからだ。 彼女の姿を認めたトルファルディーノ、 「出て行け」とばかりに彼女に掴みかかる。 双方取っ組み合いのけんかの果てに、フェタ・モルガナは押し倒される。 その様子を見て、なんと王子が笑い出した。 「何て…おかしい…ばあさんなんだ!」 それを見た王様や国民は大喜び。
しかし、おさまらないのはフェタ・モルガナ。 「野蛮人!よくお聞き! お前は3つのオレンジに恋をするのだ。 お前は3つのオレンジを探さずにはいられないだろう。」 その言葉の魔力に王子はかかってしまった。 しかし、今や元気満々の彼は、人々の静止を振り切って、 トルファルディーノと共に、オレンジ探索の旅に出かける。
第3幕。 王様サイドについている魔法使いは、 悪魔を呼び出して、王子達の居所を尋ねる。 悪魔が答えて曰く、「恐怖の料理女の城へ向かっている」。 何とか止めさせようとする魔法使いをあざ笑い、 悪魔は闇の世界へ戻ってしまう。
それならせめて、と魔法使いが取り出したのは魔法のリボン。 王子とトルファルディーノの前に現れた彼は、それを渡してこう忠告する。 「3つのオレンジを手に入れたら、水がある場所以外では切ってはいけない」
魔法のリボンを使って「恐怖の料理女」からオレンジを盗み出した王子たち。 道中、段々巨大化するオレンジの運搬に疲れ果て、王子は眠り込んでしまう。 一方、トルファルディーノは咽喉が渇いてしょうがない。 そうだ、オレンジがあるじゃないかと、ためしに一つばっさり。 すると、中からは一人の美しい女性。 驚くトルファルディーノに向かって、彼女は水を要求する。 そんなことを言われても砂漠のまん中のこと、 一滴の水もあるはずはない。 「早く水を…でないと、渇きで死んでしまいます」 うろたえたトルファルディーノは、もう一つのオレンジをばっさり。 さあ、このオレンジの果汁を…と見ると、やはり中には一人の女性。 そして彼女も「水を下さい」と言うのだ。 慌てる彼の目の前で、みるみる二人は死んでしまった。 トルファルディーノは、自分のした事が恐ろしくなり、逐電してしまう。
目ざめた王子は、切られたオレンジの有様を見て驚き悲しむ。 「私に残されたのは、愛するオレンジただ一つ」。 たまらず、ラスト1個に刀を入れる。 と、中にはひときわ美しい女性がいた。 そしてやはり要求するのは、一滴の水。 困った王子であるが、ある手段を使って、彼女に水を与える。 (その手段に関しては、実際観てください) 生気を取り戻した姫と王子は、しっかり抱き合う。
「王様に知らせてくる」と彼女を待たせて城へ向かう王子。 彼を待つ姫の前に現れたのは、フェタ・モルガナ。 魔法を使って姫を大きなねずみに変え、 自分の手下を替わりにその場へ残してゆく。
戻ってきた王子はびっくり。 なんと、愛する姫が娼婦になっている。 「これは私のオレンジではない!」という王子に、 「それでも男は約束を守らねばならない」と、 王様は結婚を命じる。
第4幕。 魔法の世界では、二人の魔法使いが相変わらず取っ組み合い。 弱い魔法使いをあざけるフェタ・モルガナであるが、 思わぬ助っ人の登場で、彼女は追い払われてしまう。 さあ、王子たちを助けに行こう!
宮殿では、失意の王子をよそに、結婚式が行われようとしていた。 玉座にかけられたヴェールを取り除くと、 そこには一匹の巨大ネズミ。 驚き騒ぐ人々の中に魔法使いが現れ、呪いを解くと、 そこには元通り美しい姫の姿があった。 王子は叫ぶ。 「これこそ、私の愛するオレンジ!」
今や、陰謀に気づいた王様は、 姪の王女と首相を罰しようとする。 しかし、隙を見て逃げ出した彼らを、 フェタ・モルガナが手招きする。 向かった先は、炎と闇の世界…
そんなこんなで、王国は喜びに包まれる。 「王様よ永遠に!王子と姫よ、永遠に!」
…とね、こんなストーリーなんですが、 長々とこれを読んできた方々。 今、あなた方の脳裏に浮かんでいるオペラと、 ボリショイのそれとは、多分全く違うものです。 機会があれば、是非是非。
2003年06月16日(月) |
Massive Attack!!! |
この1ヶ月、じりじりして待っていたこの日がついに。 Massive attackのライブである。
…なんて周囲に言っても、 今いち関心を示してくれないのだ、悲しいことに。 まあね、ボンジョビーとか、エアローとかに比べたら知名度低いし。 (何故かカタカナ)
ということで簡単に感想を記すと、
ライブで聴く彼らはやっぱり最高。(感涙)
今回のツアーは「100th window tour」と銘打たれていたが、 スタジアムで演奏されたのは、ほとんど前作アルバムの曲。 …ま、L国来るの、初めてらしいし、 言う程聞き込んでなかったので、ちょうど良かった。 ボーカル陣もあらかた全員歌ったし。
不満といえば、前座から1時間以上待たされて、 すっかり体が冷え切ってしまったということか。 頼むよMassive。 というよりこの場合、頼むべきはL国のスタッフかも。
でもいいさ、風邪をひこうが何だろうが、 彼らの音楽が大好きなコージ苑なのさ。
※※※※※
実哲也『国は溶け、人は目ざめる』日経ビジネス文庫 ここ数日、とある事情でにわかEU嫌いになっているコージ苑なのだが、 それが否定的であってもわいた興味は放っておけず、 大使館から借りてきた本である。 EU経済に関する大枠から、各国の取り組み、メリットデメリット、 取り揃えて初心者向けに解説している。 経済オンチが読んでも大丈夫。
いい加減大学の寮を引き払ってしまわないと、 時間は過ぎるばかりであるということに気づいた。
ギリギリ人間というものは、 切羽詰った時に発揮する馬鹿力を自らに期待する。 コージ苑は、引越しに大切なのは勢いだと思っているので、 この「力」がどうしても必要なのだ、と自己弁護。
とにかく、残っていた荷物をドカスカ箱詰めして、 あまり深く考えず捨てるものはジャンジャン捨てて、 応援の七味屋車にポンポン放り込んで、はい終り。
それを七味屋宅に一時避難させてもらったところ、 美しい彼の部屋で、コージ苑の荷物ってば、まるでガラクタ。 うっかり放置しておくと、 お掃除のおばちゃんに速攻で捨てられそうな見てくれである。
古ぼけた部屋に1年置いていると、 モノも古ぼけてくるのだろうか。
ということは、住人も古ぼけてしまったのだろうか。 おそろしい。
2003年06月14日(土) |
スパゲティとカレーライス |
昨夜、週末を祝って宮崎駿のDVDを2本連続で観た。 モノは「カリオストロの城」と、「紅の豚」である。 ちなみに、宮崎アニメの中でどれがベストか、と問われれば、 自分の場合は迷わず「紅の豚」を選ぶ。 わあ、コージ苑さんったら、おっとな〜。←自分が言うな
その2本の中に共通して出現するアイテムがある。 何かというと、「スパゲティ」。 それは「パスタ」では、断じてない。 「スパゲティ」なのである。 どう贔屓目に見てもケチャップ色したナポリタン風ソース、 所々に見え隠れするミートボールらしき物体。 それは、昨今日本人が目ざめた「本格パスタ」からは程遠い絵である。 そして、そのサブリミナル的映像を見ているうちに、 「ルパンのスパゲティ」がやたらと食べたくなったコージ苑。
えらく長い前ふりになってしまったが、 こんなわけで週末のブランチは「ルパンのスパゲティ」となった。 味はあくまでクラシックに。 トマトというよりケチャップ味をきかせて、 こしょうとニンニクをたっぷり。
そして完成品を心行くまで味わいながら、 今度は「トトロ」を観るコージ苑。
どんなアニメ野郎だよ。
「今日は13日の金曜日。ジェイソン出現の日」 とか日記に書いている人、 今日の世界には多いはずだ。
…かえってベタすぎるからそうでもないかも。 (コージ苑も書いてて恥かしいですわ)
バタヤンの御母堂が、日本からやって来た。 そして何故かコージ苑達は、昼食に招かれた。 花を手土産に伺うと、並んでいるのはちらしずしや豚の生姜焼き。 ああ、ニッポンの料理ってすばらしい。
関係ないが、バタヤン宅はR市でいちばん有名な住宅である。 この町の建築物には、アールヌーボー様式が多用されており、 その筋の専門家が視察に来る程のものなのだそうだ。 そんな建築群の中でも、バタヤン宅は際立って美しい。 この時期、観光客がひっきりなしに彼女のアパートの前を通り、 感心してその外観を眺め、写真を撮っている。
その前をすっと横切り、 暗証番号つきのドアを開けて、 中に入る時のそこはかとない快感といったらない。 (自分の家でもなんでもないくせに)
こういうのを、「虎の威をかる狐」というとか言わないとか。
※※※※※
土屋賢二『棚から哲学』文春文庫 どこかで「小市民的笑い」と評されていたが、 相変わらずのひねり方、オトシ方。 「後書き」が一番面白い気がしてしまったのはコージ苑だけか?
「日記」というものの性質に反して、 これは昨日のことであるが、 ケンタロウ氏がロシアからの友人を伴ってやってきた。 彼はペテルブルグ在住5年。 ロシア製ビールを飲みつつ、バリトンで彼が話すロシアは、 熟知しているからこそ、というけなしっぷり。
そしてその横で、奥様と掛け合い漫才のような会話をするケンタロウ氏。 交際期間を含めると、彼らの歴史は10年弱。 知り尽くしているからこそ、という落としっぷり。
思うに、「罵りつつ愛している」という点で、 (それとも「愛しているから罵っちゃう」のかもしれないが)
「ロシア好きが話すロシア像」と、 「夫が話す妻の姿」(逆も可)は、
同類項なのかもしれない。
七味屋氏宅のパソコンを借りて、インターネットをしている。 電源を入れて、起動するまでにコーヒーを入れ、 (他人の家でコージ苑てばよう…) 戻ってみると、見たことも無い画面。
彼ご愛用のデスクトップの壁紙は、「青空に雲」模様である。 それが何の間違いか、色設定が16色になっていて、 「灰色の曇り空」に変わっている。
何か嫌な事でもあったのか?
※※※※※
山田詠美『ベッドタイムアイズ』河出文庫 今さらなんだが、 今さら読んじゃった。 それでもって、今さらながら「山田詠美くさい」と思った。 彼女の作品は、どこを切っても彼女の文章だな。 すごいな。
夏が近づき、道路端にアイスクリーム売りが出てきた。 コージ苑が見るところ、 L国の老若男女の約3割がアイスを食いながら歩いている。 売っているのは単なる「冷菓」(つまり本物のクリームではない)なのだが、 彼らは本当にそれが好きらしい。 それを見ながら思い出すのは、ある学生の語ったこんな話。
彼女が子供の頃、 即ちL国がまだソ連の支配下にあった頃、 アイスクリームといえば「白いのと黒いの」しかなかったそうだ。 そして独立後、夏の町を歩いていた彼女は、 あるものを見て衝撃を受ける。 それは、ピンクのアイスクリームだった。 「本当にびっくりしました」と、その学生は言った。 「そして、それを食べた時、本当に美味しいと思いました。 だから私は、今でもイチゴのアイスクリームが一番好きです」
あー、ちょっといい話になっちゃったかも。 (自分で言ってりゃ世話ないけどな)
※※※※※
上前淳一郎『読むクスリ13』文春文庫 こちらはまさに「ちょっといい話」集。 おかしかったのは、このネタ。 かつて流行ったジョークなのだが、 「アメリカ人の給料をもらい、中国人のコックを雇って、 イギリス人の家に住み、日本人の妻を持ち、 スイス人に管財人を依頼し、イタリア人を愛人にする。」のが男の理想。 これを、あるビジネスマンが評するに、 「一つずつずれると悲惨な事になりますよ」。 即ち、 「中国人の給料をもらい、イギリス人のコックを雇って、 日本人の家に住み、……」 後はやってみてください。笑える。
2003年06月08日(日) |
週末はアクティブに2 |
アクティブ、といっても午前中はさすがにグーグー寝ていた自分。 起きてみると体のあちこちが痛い。 よ、よかった筋肉痛がきてくれて…
「来年いけない分今年2回行きたい」と、 わけのわからない理屈をこねて、 民芸品の蚤の市にもう一度連れて行ってもらった。 しかし、2日目の午後になると、 売る方も店じまいの雰囲気をプンプンさせていた。 結局今日買ったのは、貝殻で出来たおもちゃの指輪一つだけ。
しかし、蚤の市だけが今日の目的にあらず。 さすがに寝苦しい夜が続くようになったので、 タオルケットを探しにショッピングモールへ行った。 日本で良く見る様な、大判のものは無くて、 やっとのことで見つけたものは、ちょっと横幅が狭かった。 でもまあ、いいでしょう。 これ以上冬物の布団で寝ていたら、朝には蒸し饅頭になってしまう。
※※※※※
後もう少し、動こうか。 大移動の時期がもうすぐ始まってしまうので、 忙しくなる前に、寮の荷物を少しずつ引き払わないといけない。 七味屋氏に手伝ってもらって、 今日は台所の食材を整理する。 ナマモノは別として、保存食品を段ボールにつめていった。
…私、箱3つ分も食材ためこんでたのか… つくづく貧乏性なコージ苑、29歳の暑い夏。
※※※※※
栗原成郎『ロシア異界幻想』岩波新書 ロシア版民俗学の本。 異界とは即ち霊界のことで、 宗教や死後の世界に関わる民間伝承が多く収録されている。 民衆宗教詩「鳩の書」は必見。
2003年06月07日(土) |
週末はアクティブに1 |
半年前から「行くんだ行くんだ」と言い続けてきたイベントがある。 それが今日明日開催される、 民芸品の蚤の市。
情報通ロッタちゃんによると、 この蚤の市には全国から民芸品職人が出店し、 それはもう大変なにぎわいなんだとか。 「いいものを買うには、早く行かないといけません」 と主張する彼女に、何時に行くのかと聞いたら、 「7時には着いておきます」 …おいおい、本当かそれ。 「これは遅い方です。本当に買物をしたい人は、6時に行きます」 それは勘弁、だな。 私達外国人は、いわば素人。 民芸品の出来不出来に関して、そんなに目が利くとは思えない。 よし、7時出発にしよう。
で、7時半頃会場に着くと、 まだ全ての店が出きっているわけではない。 しかも早朝のことで、けっこう寒い。 …ロッタめ…←逆恨み
最初は遠くから様子を伺うようにして見ていた私達も、 一度手を出すと止まらなくなり、 あれこれと物色しては買ってしまった。 ちなみに本日のコージ苑の戦利品は、
・柳の枝で出来たカゴ 一つ ・木を削って作ったビーズ 一山 ・木製のおたま 一つ ・木製のバターナイフ 一本 ・ウールの毛糸 三玉 ・黒い焼き物の小皿 二種類を一皿ずつ ・鉄製のろうそく立て 大小一つずつ ・L国の民族衣装をデザインした来年のカレンダー 一冊
と、本当に自然素材の民芸品。 スロベニアの新しい部屋に持ち込むつもりで、 つぶしのききそうなものばかりを選んだ。
※※※※※
午後は、ケンタロウ氏の住居改造計画のお手伝い。 一番の懸案事項である「床の傾き」を、 いい加減直さねば暮らしが落ち着かない、と奥様の言。 (こだわっているのは寧ろケンタロウ氏の方なのだが) こういうのは勢いが大事なのだ。 今日済ませてしまいましょう。
発泡スチロールの断熱材を切り貼りして、 床の傾きをカバーするような「下敷き」を作る。 そこにフローリング模様のビニール製マットを広げると、 おお!まるで日本のアパートのようだ。 試しに写真を撮ってみたところ、 あまりの印象の違いに、一同大笑い。
考えてみれば、今日は早朝から深夜まで動きっぱなし。 しかし、学生時代はこれが当たり前のように、 毎週続いていたのだな。
あの頃は若かったねえ。 まだまだ老けるには早いけどねえ。 ただ、明日の筋肉痛が心配だねえ。 (明日来るんだったらまだいいけど)
バタヤンが車を買った。 彼女が所持している免許はオートマ限定なので、 そこにこだわって探していたのだが、 何せ欧州はオートマ不毛地帯。 諦めかけていたところに、降ってわいたいい縁談。 ということで、彼女はめでたくオートマ車を手に入れた。 トヨタのカローラで7年落ち、ハッチバック式5ドア。 本日納車。
夕方、七味屋氏から電話がかかる。 「あのね、バタヤンが『おごるから夕食一緒に』って言ってますが」 行く行く、と二つ返事でOKしたコージ苑の言質をとった後で、 彼はおもむろに付け加えた。 「ただし場所は空港のレストラン、運転は彼女です」 その一瞬、電話線が沈黙を運んだ。
しかし日本で全くのペーパードライバーだったわけではなし、 多少なら右側通行の経験もあるということで、 待ち合わせて空港へレッツゴゥ。 はい、では発車前にライトをつけましょう。 バタヤン、スイッチをひねる。
ワイパーが作動した。 古典的な程のお約束。
がんばれ、キミの運転人生は明るい。 …多分ね。
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中島らも『愛をひっかけるための釘』集英社文庫 茶道の雑誌に連載されたというこのエッセイ、 そのせいかちょっとだけセンチメンタル。
東京観光の老舗「はとバス」も、最近は様々なツアーを用意しているそうで、 帰国の際には是非乗りたい、と思うことしきりである。
休日出勤ついでに、中央市場へ。 一人で来るのは久々なので、ゆっくり見てまわった。 さて帰ろうか、とバス乗り場に向かう。 実はここからバスで帰るのは初めてのコージ苑である。 先日、ケンタロウ氏夫妻と同行した時の記憶を手がかりに、 やって来た19番バスに乗り込んだ。
そしてすぐ、ある事に気づく。 逆方向である。 あほである。
しかしコージ苑、とっさにポジティブシンキング。 一度終点まで行ってみたいと思っていたのよねー。 それは後付けの理由じゃないのか?などと言うなかれ。 人生は臨機応変、四十にして惑わず、なのだ。 (四十にはまだ10年以上ありますが) こうなったら意地でも途中で降りてやらないもんね。
結果40分、「世界の車窓から」してしまったコージ苑だった。 楽しかったよ?
本当に楽しかったよ?
ケンタロウ氏が言う。 「町に英語をしゃべる外人が増えた」 観光シーズン到来である。
町全体がうきうきと楽しげで、 在住者のこちらもつい、周りを見回しながら歩いてしまう。
そして今日は2回ほど、足首をひねったコージ苑である。 (舗装状態が悪いのよね…)
2003年06月03日(火) |
June or July? |
そろそろ、日本帰国の日程を決心すべき時である。 値段と時間とマイルの兼ね合いで悩んでいたが、 とりあえずフライトの日程だけは決めてしまおうと、 件の旅行代理店へ向かう。
前回担当のお姉さんに、 「日にちを変えたいんだけど」とお願いする。 7月半ばに帰国して、お盆直前に戻ってくるという日程。
コージ苑が持っているマイレージカードは、 コペンハーゲンを中継地とするS航空のもの。 マイルを貯めるには、当然この航空会社を利用するか、 スターアライアンス所属の各社を使うかである。 従って、コージ苑が提出した条件は、 「スターアライアンスを使って、なるべく安いチケット」。 人(註:除ブルジョア)として当然の要求であろう。
お姉さんがパソコンをたたいて出してくれたのは、次のスケジュール。 R市→ストックホルム→フランクフルト→成田、 成田→フランクフルト→コペンハーゲン→R市。
…確かにマイルは貯まりそうだが… 普段R市→コペンハーゲン→成田、という一回の乗り換えで済ませているだけに、 このフライトはちょっとつらそうに思える。 「S航空だけを使うといくら?」と質問すると、 上記のフライトよりも2万円程度高い。 コージ苑としては、それも痛い。 いや、むしろその方が痛い。
他に選択肢もなさそうなので、2度乗り換えに決める。 まあ、マイルも思いっきり貯まるし、安いんだし、 と努めてポジティブな方向に自分を持っていくコージ苑。
「いつ支払いに?」と尋ねるお姉さんに、 「うーん、今月20日ぐらいかなあ」と答える。 すると、「え?それはだめよ」と怪訝な顔をされた。 「あなた、もうその日はフライトした後じゃない。」 「いやいや、『今月』の20日だよ?来月じゃなくて。」 「だってフライトはJuneの17日だよね。」
コージ苑…Juneって言いました?
ごめん、違いますJulyです。 (中学校からやり直せよ自分)
誤解が解けた結果、 許容範囲内の値段で1回乗り換えの便をめでたく予約。
2003年06月02日(月) |
トウバンジャンの冒険 |
この広い世界には、スパイスが必ずしも得意ではない民族も存在する。 例えばY先生の彼氏(ルーマニア人)は、 例えそれが「カレーの王子様」であろうが、 スパイスの類は全く受け付けない。 「おたふくソース」も危ういらしい。 その点に関してのみ、私は彼らの結婚生活が心配だ(←余計なお世話)。 そしてどうやら、この国の方々も、 日本人ほどスパイスに熱意を燃やしていないらしい。
ここ数年、急速に発展を続け、 日に日に便利になってゆくR市のスーパーには、 世界各地の食材が並び、そこには当然調味料も含まれている。 ハンガリー産のパプリカから、インド産のカシミールチリ、 ナンプラーやナシゴレン、果ては練りワサビまで。 品揃えの割に、いつ見ても売れている様子がないのが気掛かりではあるが、 それはまあよしとしよう。
しかし、しかしである。 メジャーマイナーこれだけ揃えておきながら、 「辛い」系調味料の王様(※コージ苑ランキングによる)、 トウバンジャンだけが見当たらないのはどういうことだ。
R市中を探し求めて1ヶ月、 遂にコージ苑はこの国での入手を諦めるに至った。 いいや、どうせ日本に帰るからその時で。
それにしても、ミソすらあるのに… 誰かこの「何故」に答を下さい。
ただ同然で住んでいるコージ苑のアパートでは想像できないが、 七味屋氏宅には24時間つきの守衛さんがいる。 ちょっと治安が心配な国でも、これなら安心、大丈夫。
彼らのシフトは、どうやら3交替制のようだ。 入れ替わりやってくる3人のおじ(い)さんは、 それぞれいい感じに楽しい人達である。
第一の彼:スモーカー 口髭を生やして、いかにもロシア人といった風な彼は、 3人の中で一番若い。 そして、タバコ大好き。 コージ苑が彼を見る内、3回に1回は外でスモーキンタイム。 その間、守衛室は当然空っぽ。
第二の彼:オープナー 缶を開けるのが得意なわけじゃありません。 ちょっと太目のこのおじさんは、おしゃべりが大好き。 入り口の所で、業者さんと話しているのを良く見かける。 そんな時、おじさんは鍵を取り出そうとするコージ苑に向かって、 「オープン!」とドアを指差す。 するとあら不思議、 自動施錠式の「はず」の扉が思いっきり開いているのだ。
第三の彼:ノーブルマン 3人の中で最も高貴なお顔立ちの彼は、 あまり外に出ていることが無い。 守衛室の中で読書にいそしんでいる姿は、まさに貴族である。 そしてこの伯爵様は、昼食を取られた後、 大抵はすやすやとお昼寝されておられるのだ。
そして彼ら3人に共通する行動がある。
夜10時過ぎると、 守衛室の窓に段ボール紙を立てかけて、 外界との接触を遮断し、 部屋の電気も常夜灯にして、就寝するのだ。
24時間の守衛ね…
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