ずいずいずっころばし
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2007年05月15日(火) |
英国式誕生日の祝い方 |
カンタベリーの家はカズオ・イシグロが通っていた大學のすぐ側で、カンタベリー大聖堂にも近かった。
大學からカンタベリーの街へ行くときはバスもでていたけれど、学生は背丈ほどのびた草むらの獣道をかきわけて街へ降りていくのが常だった。 背丈ほどの草むらを降りていくと人家があり、そこにはフットパスとよばれる私道があり、その道が私は大好きだった。 フットパスを過ぎると繁華な通りへでる。そこはチョーサーの「カンタベリー物語」で有名なイギリス国教会カンタベリー大聖堂がそびえている。 いまだに英国各地から巡礼に来る人や観光客で賑やかだ。
大學は小高い丘の頂上にあって、そこから眼下に広がるカンタベリー大聖堂を見下ろすのはなんとも豊かな気持ちになったものだ。 キャンパスの中を小川が流れていてそこに鴨や水鳥が遊んでいて学生達は川縁に座って語り合ったり、本を読んだり、昼寝したりした。 午前と午後2回お茶の時間があり、スコーンやビスケット、お茶が供される。 紅茶カップを手にかわべりで先生と議論したりするのは格別な楽しみだった。
英国からたよりがくるといつも懐かしさにかられる。 牧師さんのパパはちっっとも牧師さんらしくないひとで、むしろ人間くさい人だった。 食事中に高校生の息子がパパをかついだりするとそれにうまうまと乗ってしまって、すぐだまされてしまう。 かつがれたのにも気がつかず怒ると息子が「父さんったらー!冗談だってばー!」と言うと、それにまた腹をたてたりするまぬけなところもあって愉快な家族だった。
娘二人は独立してよそで生活。英国は16歳になるとほとんど親元を離れる。 日曜日になると皆実家に山のような洗濯物を抱えてかえってくる。 長女は同棲をしているらしかった。パパに一度同棲することをどう思うか聞いたことがあった。 パパは牧師さんなので同棲は認めてはいなかったけれど、厳しくいましめることはせず、好きにさせていると言った。随分ファジーだとおもったものだ。
この長女と私はよく喧嘩した。電話のことで大喧嘩。でもさっぱりした気性で嫌いではなかった。 思い出がありすぎてなつかしすぎて便りをもらうと涙がでてくる。 もう私には両親もなく、帰る家もないけれどカンタベリーが私のふるさとになった。 イギリスは私にとってなつかしい故郷だ。
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