『 hi da ma ri - ra se n 』


「 シンプルに生き死にしたかった 」


2005年02月28日(月) まひるの寝言


なにかをきっぱりと
あきらめた上で
きみ・きみたちとつながろうとするけれど

きっぱりの中にとうめいな糸がひとつだけ
くもの親糸みたいにしっかりと
張られているのを

感じてしまうね



肉声がほしいぼくはときどきとてつもなく貪欲で
ぶくぶくと増していく意識にからだはひきづられていくんだ

ひきづられていくばかりなんだ


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


きさらぎがおしまいになるので
冬をあきらめよう
早く
うまく息ができないのも
終わりになるだろうか
傷つけるのもついでに
終わりにならないだろうか

肉声はやってこない

ぼくはまたひとりで夜へと突入する

それはそんなに……悪い心持ちではないから
だから早くそこから逃れなくちゃいけないっていうこと
ひきずられていないときだから
余計に用心しなくちゃいけないと

ばかだからかぜひいたのねと言って
ひとりでなく

ばかだからかぜひいたのね

このからだは一生懸命じゃまをするので
やりたいことや会いたいひととのあいだは
もうずいぶん、隔てられ

……呼吸に雑音


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


とてもあかるい夢をみました
小学校の校庭が、あのあたり銀杏の並木のところが
大きくきんいろに色づいていて、その下を
あたらしい服を着てとても身軽でそれからあなたと笑っていました



2月28日、月、くもりはじめに夕方



2005年02月26日(土) びょうき

かぜになったらしい

熱が出たから
それに
寒気も悪寒もするし
のども腫れたし
体温計も、ちゃんと、38、

でもなんだか、へん

いつものほうが
たとえば発作もどき(不安発作?)とか
アレルギーが暴れて微熱が出ているときとか
びりびり痛いときとか
アイスノン抱えてうずくまっているとき
立っていられないとき

……の、ほうがずっとしんどい

すくなくとも今は笑うのが平気だし
泣かなくても、大丈夫だし

熱が出たら休んでもいい
かぜをひいたら病院につれていってもらえる
ひとの世話をしなくてもいいのかも
なにか遠慮なく頼んでいい、心配されてふつう

でもあんまり
しんどくない
いつもより
平気……

びょうきって、なんだろう
いつもって、なんだろう

はふ?

それともものすごいスピードで治っちゃったりするんだろうか
すごいスピードで悪くなって
すごいスピードでもとに戻るの

……はふ。



2005年02月25日(金) memo memo

とりあえず免疫抑制剤とホルモン剤
保護剤ひとつ
うまくいかなかったら次に言うこと

毎食前、インタール
就寝前、アレジオン

スクラッチテスト、ダニ、スギ、お水
 →大きな反応なし
春の鼻炎はスギとはちがった
世間よりもはじまりが遅くてずるずる長かったりするのが
気になってはいたので……やはり

カルテをみたら口とか目の周りにできる痛いやつは
ヘルペスだった。がおー。しらなかった。

「頑張っても偉くないんだよ」
「……うち、頑張らないと偉くないんです」

双方苦笑

クスリ(ステロイド)について
「いいから持ってなさい」

……まあ、そういうこと

お薬に対して実は拒否的らしい
すごく好きそうなのに、むしろ
少なく少なく少なくしようとする……

看護士さんが塗ってくれた免疫抑制剤は
じぶんで使うときよりもかなりたくさんだった
おぼえておきましょう
治療には充分な量が要ります

帰り道でかるく発作二回、
そんざいするのがしんどいになること
そういえば濃い紅茶ってのむとつらかったっけ?
証拠はない経験的な、、、

だめになると悪いことをすぐに探したくなる
さかのぼって犯人探しをしたくなる
そういうのはたぶん生産的じゃないし建設的でもないので
できるだけ、やめとこ

アイスクリームがたべたいな



2005年02月24日(木) 泣くごと

泣くごとに

少しずつ
檻がやぶれてゆく、とか
渦巻いていたものが
ほぐれる、とか
そうだったならいいのにと

とっぷりと暮れて
雨の音がする
やさしいはずの夜

眠るひとの隣でくるしいといえないでぐじゃぐじゃになって泣く
おきている人のいないうちのなかでばたばたと寝起きうろつきまわる
「とてもじゃないけど穏やかなベッドの中では眠れない」
こうなったときの私はごくしぜんにジショウコウイだらけだ
保冷剤をひっぱりだしてうずくまってすりよせる
両手を縛り付けられたらたぶん叫びだすけど
でも、たぶんほんとうは縛り付けられたほうがいいような気がする
じぶんを
叩き壊すことをしないため
たまに拘束衣のほしくなる熱烈な
からだとのやりとり

ドウシタノ、と
たずねられて答えられるうちは
まだ
だいじょうぶなんだよ、って
そんなことは
学びなおしたくない、のですが
ですが

学びなおさせたいようなこのカラダ

ぜんぜんちっとも酷い部類になんて入らないはずなのに
ここんとこ襲ってくるコレは一体なんだ

昨日はまた、新しく
なくなっていることがあることを、発見
からだのなかみがぐずぐずになるので
苦手だと思う
プリントしたあとの写真をようやく整理しようと手を出したら
知らないことが何枚もうつっていたけれど、何も記憶なし
あるような、ないような
でもいくらさぐってもそこは真っ黒の空っぽ
手招きする手が四方八方からやってくるから
それを取らない様に、あたしが
あらゆる場所でうずくまってまるくなる

ああここまできたら誰もあたしを助けられない
嵐が過ぎるまでとりあえず待って
あとはもう、抱えあげて病院とお薬の中にほうりこめ

……ほんとうにめちゃくちゃなときは
痛みとか痒みとかいう言葉より
ただ混乱のなかで揺さぶられているみたい
止まらない腕を止めて
止まらない意識を止めて
なきながら、きずつけることをやめられない

この攻防に疲れきってほんとにだめになってしまう前に

ああもう

夜が明けたら病院にいく
なんとかして、ひとりで
もういい
ごめんなさい
お金かけちゃって



2005年02月22日(火) ぼろりぼろり

笑う

笑うことができる

笑った顔をつくる

笑う

過日

晴れた太陽はときどきあんまりまぶしすぎてからだが痛いな
ひさしぶりに発作を起こしましたが(たぶん)身じろぎも
かなわないやつで参りましたがでも今はそこは越えていて
消えちゃいたいとか居られないとかいう観念もとりあえず脱いで
記憶の構成のしかたとか感覚のばらけかたとか呼吸とか
あやふやなところおぼつかないところはたくさん目につくのですが

チーズトーストをかじって笑った

いっしゅうかんでどこかよくわからない場所に飛んでいった
この間までのあたし、は一体どうなっているんだろう
ぜんぶがニセモノに見えてきて自分もニセモノに思えてきて
からだの痛みではないこころのいたいので立って居られなくなる
すがるものが要りようでした、ほんとうにごめんなさい
外出のたび安定剤をめぐって逡巡しないといけないとは
おまもりをにぎって逃げ回らなければいけないとは

おもちゃの車プラス笑う子ども

色鮮やかな食品の山

どうしてこんなにだめになれるんだろう

うまく言えない

どんどん世界が切りはなされていくあの感じと
それに伴うひたすらな気分の悪さ、というのを

あたしがあたしを手放して
ラクになろうとしているのは
いったい何がわるいんでしょう



眩暈がする、と地下鉄の駅でぐらぐらしていたら
ぐらぐらついでにホームから落ちそうなひとを助けてしまった
ばったーん、ってすごい音がしてふりかえったら
足半分からだ半分ホームからはみでて倒れていてびっくりした
線路に落っこちていなくって、まだ、よかった……
駅員さんにあとをたのんでさよならしてきたんだけれど
あのお兄さん無事で今ごろ過ごしているんだろうか
とりあえずちゃんと休んでなんか食べてくれていたらいいと思う
だってあんまり痩せていたし

東京は怖いなと無意味に思って
また思って
行く先々でこういうことをしている気もした

ああなんだかここだけすごく現実的。

帰りの電車のなかでむこうのボックス席に座ったおじさんが
ひだまりのなかでみかんを剥いて食べていた
あったかい窓際にみかんとみかんの皮が並んだ
そういうのは
なんだか
とてもいいと思った

みかんの匂いのする車内でカナダの小説を読む


がんばります

そうして

また笑う

笑うし

笑うことができるし


家出は、おしまい
大荷物も、おしまい

とりあえずまたここにて
今日を
つくらなくては



2005年02月19日(土) 逃げてしまえ?

注、そうしてつづきます、ジショウコウイ、ごめんなさい




あいかわらずでした
あるいは
もっとひどいのか
なにかが破綻したみたいに
きおく、はぐちゃぐちゃと
よく思い出せなくて
ますます

昨日のことと一昨日のことと、いまさっきのこと
把握のしかたがどんどんへたになる
こんらんとか
しっそうとか

おかしな頼り方をした過去をわたしは恥じるから
もうあのひとの好意につけこんだりするようなことはしたくないので
なにから逃げたらいいんだろうかと
肌寒いとかそういうことはもう無視して
やってゆけたらよかったのに

きずはふえてた

書いた覚えのないメールが転がっていたりとか
買っちゃっていたものとか
届かない届かないとまっていた郵便物、たのんでいた本、が
部屋のすみに開封されてしまってあるのに気がついた

あたしはちゃんとうけとってそうして中身をあらためて
そうして大事にしまったんだろう、すてきな本のはずだったから

でもおぼえてない
かけらも

手がかりがどこにもない
なんだかな
あやふやな
あたしが

なんだというのか

ぐずぐずになる
逃げておいでよと電話のかかる
がんじがらめのあたしが
動けないままそれを断る
断ったことをどうやって悔やんだらいいのか
よくわからない
しなければいけないことは家人のため
その用事で自分を縛り付けているいつも
台所に立ったら
なきながら
包丁なんかあぶなくてしかたない
笑いながら
みんなむこうのほうにいるのに
あたしが傷をつける
その手でつくったごはんを
みんなが、食べていて

もう眠る
眠る

そのままがいいのに目が覚める
朝の4時
ながいながいひるま

・・・・・・。

元気だったはずでした
以前よりもたしか確実に
うごくこともかない
たしかにつらいからだのことはつづいていたけど
でも、笑おうとしていて
弱々しいことは言わないときめて
だいじょうぶなはずだった
ごめんなさい
守れない
いま、なんにも、まもれない

いていいと思えるところを探したの
守ってもらえるかしれないところ
安全だと、感じられるところ
思いつけなかった
たくさんのごめんなさい
笑いながらしんじゃってもよかった
たぶん、なんだか
それくらいのことしか考えてなかった
笑いながら、笑うたび
やいばがあたまのなかをよぎる、つきたてたいという
なぜそうなるのかわからない
笑っているというのに



おてがみをありがとう
おぼえていてくれたことと
みていてくれたことについて

ありがとう

おねえちゃんとよんでくれてありがとう
あったこともないあなたに

みんな大好きなのにな
どうしてなのかな

そこにいったら安全だと思うところがみつからない
ただここからでていかないといけない気がしていて

雨の中荷物つめて
もう行くよ

ごめんなさい
ごめんなさい



2005年02月17日(木) どうすりゃええのか

注:ジショウコウイそのほかをふくみます




水曜日の
朝の
7時ごろから
翌日木曜の
つまり、今日の
午前3時ごろまで
いったいなにをしていたのか
さっぱり
思い出せないと

気がついたときから世界がこわれかけているよ

わかるのは
どうやら
起き抜けにこころがぐずぐずであったこと
台所でヨーグルトを食べていたこと
せいしんあんていざいがひつようであるとおもったこと
しかしながら
よいお薬のもちあわせなく
しかたなくあるものを飲んだこと
あるいは
のみすぎた、のかもしれず
自動書記のように

以下
不明

気がつけば夜中であったようで
でもどこで目を覚ましたのか思い出せない
暗いし、いつなのかと
わからず
眠っていたと仮定するにはあまりに
時間のながすぎ
家人もしずかすぎ
三食おろそかにしたにしては
くうふくも、なく

わからないと
せかいはくもり

雨が降っていた昨日の朝の続きがきえてしまう
ここはどこでいつなのか

ただあとで聞いたには
台所で倒れているのを家人に発見された模様
そうしてこわいことに
ごはんも、たべていたとのこと
いったいなにを食べていたのか
どの口がどの胃袋が

さあ?

でも目が寝てたと愛すべき弟君はわらい
死んでるのかと思ったと兄は言い
しんでりゃよかったかとうっすら思い
そのほかのひとびとは
父と母、は
ひとこともふれずなにごともなかったかのように
今日の日をつづけていた

あたしなんかいないがいいのにと
湯船でひざをかかえうずくまる
つめたくなっていくお湯も
もうそれでいいようで
ぷくりぷくりぽこぽこ
泡のかすかにたちのぼる
抱えた膝が切り傷だらけなのはあたしのせいじゃない
あたしのせいじゃ、ない

いったいなにをつかって
なにをしたくて
記憶のないあたしは
このからだをふたたびきずだらけにしたんでしょうか
何十本も
あかい線を、ひっぱったのでしょうか

迷いのないまっすぐな傷だったので
ああ
このあたしはなにかひどく
こころに病むところがあるのだろうか、と
ばくぜんと
思った次第

どうすりゃええのか、と

泣き出したいような気もするけれどうまく泣けず
泣きつける理由もしがみつける腕も
みつからないのですべてを笑い話にして
からからと笑って今日の日をおわりにしてしまおう
2月17日、なんていう
何の日でもない
ただごくふつうの24時間にすぎなかったと
みんな
思ってください

あたしのきずはこれから
どうなるかとか
考えたくないので
かんがえたく
ないので

回避されるじぶんを遠くからみていましょう
いなかったことになりたい
なかったことになりたい
あたらしい傷があたらしい皮膚についてしまった
まだなめらかできれいだったところに

あしたどこにいけばいいんだろう
どこにいたら
あたし
だいじょうぶと思えるんだろう

ちゃんと自分の目で
せかいをみて
感じることのかなうところ

思いつかなくて
トゲ立てて
みんなみんなに
片意地と皮肉とやさしさをぶつける

・・・・・・Kちゃんに会いたい


ごめんなさい

ごめんなさい



2005年02月14日(月) St.Vallentine、少女服よりはじまる一日



ふらりと読んだ場所に行きそこねたイベントのことが書いてあって
少し泣いた
やっぱりあきらめきるのはむずかしかったんだなと
自分では思いがけなかった泣き方に、ちょっと思った

行動にうつさないでじぶんのなかで処理したはずで
もうなくなったはずで
ちかい一週間にあきらめてみたことの数をかぞえたら
わたしなんかなんにもないじゃないかとぼんやり落ちる

そうだなんにもなかった

夢を見ているのかみていないのかそのあたりから
とけてしまってよくわからない、あいまいな眠り方で
ひるまを泳いでいくとどこまでもつづくんです
癒してくれない眠り方をわたしのからだが学びました




まっしろなワイシャツをはたはたと干した
朝の7時の空気はひえびえとしてつめたく気持ちがいい
雪をかぶったあの山までもくっきりとみえた
ちからまかせ攪拌されたからだのなかみを整えるに適している

庭の隅で白梅がちらりちらりと咲いている
すっきりと香るのは冬だからだよね




トウキョウへむかって出て行く弟が着がえようとしてぼたんを飛ばした
つけてよと言ってもってきたのにふうんと応えて
しめきっている二階の部屋から裁縫箱がわりのクッキーの缶を出し
すいすいとぼたんをつけてやる
こういうときわたしは、笑ってしまうほど保護者らしい
まるでお姉ちゃんみたい

彼は我が弟ながらすこやかでとてもいいやつで
そのよさといったらほとんどもう驚異的
夏に、ふと耳にした電話で
じぶんの弟のことを「我が最愛の」と冠して呼んでいる人がいたのだけど
彼女の弟がどんなひとかとか、そういうのは別にして、ともかく
その表現はもしかして私にもあてはまるかも知れないと、ちらりと思う
離れて暮らすようになってみてその感覚はくっきりと強まった

ちなみに彼はもう10年ちかく前に私のことを
むしろ妹みたい、だと言った
自分のほうが背が高くなったからといってそういうことを言うんじゃありません
14日だからチョコちょうだいと言ってみたら
おまえ女だろとあきれられてしまった
姉はちょっとつまらんよ弟よ
そういうことだと彼女さんにきらわれますよ
年上を敵にまわすと怖いんですよ

なにしろちびちびだった頃こいつはまだ幼児だった私の膝の上で
歌いながらはみがきなんてされていたのであるから
それだからね私ひそかに子どものはみがきが得意なんです




ふてくされた姉は巨大チョコレートバーを買いに行きたく思います
おさげ髪にぼうしにエプロンでも着て
できるなら外をあるきたく思います

ガーランドの長袖のワンピースはとっても好きだから
ほんとうは毎日でも着たいような気がする
丸衿と細いりぼんとピンタック、ベージュに茶色、小花柄
実際に着られるのはパジャマにしても

最近は洗いざらしてくたくたになったダブルガーゼが好きです
ごろごろ転がるに痛くないのはひとつしあわせなことだと
思います



2005年02月13日(日) 浴槽

窓の外があおい
なじみぶかくて好きだった色に
しんしんと染まった

みるみるうちにしろくなる、まぶしいと言った
たくさんの火花がそこに散るので

ほんとうは行きたいところもしたいことも
手に入れたいものもたくさんたくさんあるはずなのにね
日々ちいさな義務をこなすのでぼくはもうおしまいになるから
今日もまた、どこにいけるわけでもない
電車にのって会いに行きたいひともいましたが
たくさんの事情がそれを阻むので
どうやらまた、会えずじまいで終わるので

かんがえない練習をまたしよう
ことさらにかなしがる必要のあることなんて
ぼくは持っていないから

痛いとか苦しいとかが減ったらそれでいいかなと
それだけのことで満ちていけるくらいささやかになるんだ
このからだに見あったくらいの小ささで

またリスクのたかくなるころ
病院に電話でも致しましょう



2005年02月10日(木) 下から三番目のこども

聞きたい知らせと聞きたくない知らせと聞かなくちゃいけない知らせ
どれでもとにかく運んできてくれる電話、
呼びだし音はいつもけたたましくなりひびく
本日祖母入院・・・の、報告あり
こういうショックはあとからじんわりとやってくる
ふかいところまで考えや感情がとどかないで
なんだかとんちんかんでちぐはぐな方向に
瞬時に飛ばされてしまうこと、いつもいつもそうね
顔がうまくつくれないでいた13歳の時のままか

折りしも年上のイトコに
半月前にこどもが生まれていてそのお祝いの言葉を考えている最中
ちいさなふわふわした白い帽子を買ってみたのはただ先週のできごと
というか、生まれた知らせの電話じたい
病院まで付き添ったらしい祖母自身からかかってきたのであって
あれあれあれというような状態のかわりかたでもあるので

年齢が年齢だから、とたぶんいえるひとが親類には何人かいて
今までなにごともなくやれてきたからこそ
避けられないことがいくつか近い将来に待っている
息をつめてその知らせを待っていた、というような側面がたぶん
最近ずっとあって、だから
ああとうとう来た、という思いも一緒くたに私の中にある
誰かをなくすのはこれ以上ないというおおごとで違いなくて
これから先に何回も何十回もその状態になるのだなあと
ひとりひとり思い浮かべてしみじみと実感してしまった日には
思わず自分自身がさきにいってしまいたくなったんだけど
おかげで、ほんの少しだけ
練習みたいなことができたのかもしれない

吉本ばななの「ハネムーン」に
一緒に暮らしているおじいちゃんがいつ死ぬか心配で心配で仕方なくて
おじいちゃんが亡くなったら今度は(恋人の)まなかちゃんが
いついなくなるのかどうなるのかが頭から離れずにつらくてつらくて
どうしようもなくなってしまった少年というのが出てきたけど
その混乱や恐怖やうっかりしたらとりちがえてしまいそうな選択は
笑い飛ばすようなたぐいのものではないと、思う
心の中ですっぽりと鞘に収まってしまったときの恐怖、は
ひとを呪い殺せるくらいの大きな力は、きっとあるので

まなかちゃんは、その幼なじみの少年にたいして、たしか
「あんたと心中はごめんだからね」
みたいなせりふを言ったんだと思う
死ぬならひとりで死んでね悪いけど私は生きるから。
まなかちゃんのそのぶっきらぼうなところはすごく好き
そうやってさりげなくヘルシーでいるところ
すごいよなあ
周りがぐっちゃぐちゃになっていてもそうやって
中庸でいられるようになったばななさんはえらい
……と、勝手にほめたたえてみたりして

と、ひたすら呑気なのだけど
なぜって祖母については
おそらく元気なので
(入院しているひとを元気と称するのもへんだけれど)
半月前に生まれたその子を入れても下から三番目、という
この年齢にしてはずいぶんな幼いポジションのままで
祖母からみると半人前以下みたいな私は
どこか、ぼんやりのんびりかまえていて
ああ楽をさせてもらっているのだろうな、と
うすぼんやりな頭で、ふらふら考え
兄なんかはかなり騒いでいるのだけど
そこまで話をふくらませてしまうのもどうなのかなと
疑問に思う、病気になったらそこで終止符ですか
そういう彼の考え方はいつものことなのだけど
ときたま私はそれでくるしいので聞いているとつらいときがある
心弱いやつは所詮不要というのがこのひとの持論なので
わたしなんてほんとうに存在がごみみたいなものなのだ
それからまだちゃんと生きていてこれからもちゃんと生きるひとのことを
すでにしんでしまったひとみたいに扱うのはちょっと……やめてほしい
それでもうおわりなんですか
ちがうよね
ちがうよね
下から三番目のこどもの甘い思考なのかな
これも

ただ赤ちゃんおめでとうという気持ちがすこし曇ったのは、ほんとう



2005年02月08日(火) 欲、午前4時


ねむっていたいのだけど

うつぶせてこのまま

ぐたり、

ねむっていたいのだけど



つかれが回復できるまえに眠りからもさめるし24時間たってしまうこと

涙にできるくらいの水気があるならそのぶん肌に回ってほしい


ため息。



はしるのはこころで

ひきずるのはからだで

なげだしたくなるのも、おなじ

少しばかり手のかかりすぎることに追いつめられて

もうやめたいよ

泣きじゃくってもなにも変わらなかったから

また

まっしろに輝くお日さまがのぼるね



・・・・・・おやすみを言ってね



9日、早朝。



2005年02月07日(月) 息を吐いて、そして


あたらしいしあわせのかたちは

きっと まなびなおすことができると、思うように

思うことのできるように

少しずつしみわたらせるのはしずかなこきゅう

つめたくてあかるい酸素とともにとりこんだ

ちいさな粒子をのみこんだ

ほら きっとちがうものにうつりかわれる

すこしずつ すこしずつ

きよらなあかるさにふさわしいものに きっと



いつか泥の底から腕をのばしそらを見よう

冬のそらでよかった、とうめいにいかついひえびえとした青で

それを手につかみとりきっと笑うだろう

あなたと笑うだろう



知らずかたちづくってしまったゆがんだ幸福じゃなくて

ただしくてほんとうに心地いいところ

天国じゃなし

こどもでもなく、すでに貼りつけてしまえた無数のかたくな

それでもその皮膚はぬぎすてることができると

あたらしいしあわせのかたちは

学びなおすことが、できると



このからだを

塗り替えていく



2005年2月7日、月



2005年02月03日(木) 演習


飛行機ばかりがむやみに飛んでいるひるま

ひとつとばし、おちつくことをゆるさない心臓

はやく

はやく

はやく

くりかえされる轟音はじりじりと肋骨のなかを焼いていく



2005年02月02日(水) ランドスケイプ


せつないやかなしいやくるしいやしんどいや

その街道をひとりきりでつきすすむことのないように


そこは、茫漠とした風景でありましょうが

心地いいことのけはいのない場所でありましょうが

しかし


きみをのぞむものがおります。




2005年2月3日、深夜


 < キノウ  もくじ  あさって >


真火 [MAIL]

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