『 hi da ma ri - ra se n 』


「 シンプルに生き死にしたかった 」


2003年04月21日(月) あ、飽きた。

しばらく多分頭の中がヒートアップしていたのだけど
(文字通り毎晩のように熱が……知恵熱か?(笑))
自分に太刀打ちするとか病気がどうとかこうとか元気ってなんだろうとか
このお守りを自分で剥奪してみたらその先になにかいいことがあるかなとか
思考とはとても呼べないことをぐるぐる、ぐるぐる
頭から離れないから仕方なく半月くらいも思い続けていたような気がする、が
3時間くらいぶっとおしで人の話ばかり読んでいて
ぷつん、と切れてしまったように思い立った。

やーめた。

落ち込んでいるのに、飽きた。

昔からなにごともくよくよ思いつめる方だけどただし、
思いつめるのは長続きしないんだよね、
どうも。
と言っても、日ごろよく動かしていない頭なので、
本当に思いつめられているのかどうかは
ちょっと、怪しかったりするのだけど。

……そうしてこうなってくるともう、それは思いつめるとは言わないような。

たぶんまたそのうち同じようなことでくよくよするでしょう。
いくらオーバーヒートするほど考えても半月やそこらでは性格は変わらなくて
傾向も変えられなくて、アトピーはよくなるわけじゃなくて、
だからたぶん。

同じようなことを言われることはたくさんあるだろうし
(まさに今この次の瞬間言われるかもしれないけれども)
そうしたらまた落ち込んで、それからまた飽きればいいかなと思います。
落ち込みに落ち込むけど、でも、最後に浮上しなかったことはないぞ、という
威張れないようなことで威張ってみる。

虚勢かな

そうかも知れない

だけど

時間は止まらないけど早送りもできないし
眉毛だって早々生えるわけじゃないし。


 補:
 人によりますが、アトピー、
 顔面に炎症が出てくると眉毛がなくなることがあります
 私は比較的なくなりやすいようで、
 観察してみると抜けるんじゃなくて「切れる」らしいですが
 右側の眉毛はほとんどないです(ちょっと恐い顔になれます)
 ついでに今は睫毛もほとんどない(これは初めてだったのでびっくり)
 そんなわけでいちばん最初に買った化粧品はアイペンシルでした
 リップクリームよりも先にこれだったのはちょっと面白かったような……


夕方に、ほんの5分だけ外に出て行くことになって
思いついて下駄を出しました
とても古くてどこにでも適当に履けるやつです
履きなれていないので、足のほうが負けるけど……

小さい頃はビーチサンダルなんてよく履いていたなあと思い出しました
指のあいだが痛かったのかどうかは、あまり思い出せません
キティちゃんがついていた気がするけれど、自分の趣味だったのかは謎、
ピンク色のウレタン。

とても気に入っていた白地に渋赤い蜻蛉の柄の浴衣が着られなくなって
かわりに作ってもらったパステルのABCの柄の浴衣がイヤだといって
駄々をこねてふくれていました。


行けなかった病院に行ってこようと思います
とうにお薬切れている計算ですねと叱られるだろうなと思いつつ。
ダメ患者さん。



2003年04月16日(水) スロープ

嫌いなこと。
病気に逃げ込む自分が嫌い。
嫌いと言ってもなにも始まらなくて終わらないというのが始末が悪い
と、わかっていても、やっぱりきらいなこの傾向、、、
というより
性癖かな、
悪癖。

何かといえば
熱を出したりおなかをこわしたり
炎症を起こしたり傷だらけになったり
呼吸困難になってみたり
パニックとか
何でもいいや、いろいろなことが起きているけれども

突き詰めていったら
あなた好きで病気をやっているんでしょうと言われたら反論できない
ということ。

反抗できても。

つらいとか痛いとか痒いとか生きているのがしんどいとか
そういうふうになっていく前に、ワンステップ
必要なものがあると思うのに
そこを飛び越えて痛みをダイレクトに自分の身体にぶつけていくみたいな
そういう方向に、ころころ転がっているらしい自分の在りかたが
たぶん嫌い。

そう考えても何も止められないから落ち込む。
今日もアレルギー性だと思う熱を出して半日寝込んでしまった、
という事態をたぶん招いている自分を考えて落ち込む。
落ち込むけど本当のところは落ち込んでいないんだと同時に鞍替えす。
そう言っても心のふかみには自分では辿りつけないらしい。
それだからわたしは今でも
「病気」をやっているんだろうと思う。

今日もまた鏡を見られなかった。
これで何週間、自分の顔を直視していないのやら。


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どうしても手紙を書かなくちゃいけない機会に久しぶりに何度も出会っていて、
実のところ自分は日本語というものがすごくすごくニガテだなと思い知ります。
社交辞令としてのお手紙とか。
とくに、動機のないことば。


便箋と切手と封緘シールは、とても好きなんだけれども。
おかげで手元にたくさんたまっているんだけれども。

行き場のない便箋がたくさん。


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ひとから降ってくることばはとてもこわいね。



2003年04月13日(日) その日曜日の出来事

am5:00


一年が経ちました

わたしはまだ、ここにいます

あしたも、あさっても、ここにいる

たぶん

そうしていつかあなたの年を追い越す

・・・・・・それは、すごくすごく、変なことに思えます

30歳から向こうの時間がまっしろに見える

それは少しだけ危険だけど

わたしまだここにいます。


なにかを食べたいとかなにかをしたいとかよくわからないし

生きるとか死ぬとかよくわからないし

なかよくしようよって刃物があたしのことを呼ぶ

なにも手に取らない選択、窓枠をのりこえていかない選択、たくさんの錠剤は見ないこと


夜の中で鳥が鳴いてる。
朝になっていく空はものすごく青い。


一年前のこんな夜明けに目を覚ました
壁に吊るされた喪服があたしを見ていた
どこもあたたかくなくて
心底、ひえきっていて
涙の一滴も入り込むすきまがない朝と夜のさかいめ

あなたが目を覚まさなかった朝と夜のさかいめ

わたしはなんにも知らない
たぶんこれからも何にも知ることはないと思う

空気に触れているところがひりひり痛んであたしはまだ自分が生きていると思う。


何にもかなしくもなくて冷ややかにやさしくて
ひたひたと満ちてくる
この青い時間は、ひどく、ひどく、
なつかしくて、そうして
孤独です


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pm3:00

毛布の下で、夢を見た

居心地よいくらいにごちゃごちゃして人がいて空間がある駅で
わたしは黒い旅行鞄をかかえて立っていた
この間まで画廊に行くときにいつも抱えていたナイロンの鞄

どこに帰るわけでもなくて、だけど帰るということはわかっている

行くところがなくて途方にくれた足で改札口の外に途中下車していった

透明にあかるくて人が大勢いるのにしずかで
すきまの多いおかしな町のなかで
うるさくなくて

駅を出て右手に歩いていくのは吉祥寺で毎日くりかえしていたことの癖だった
この道を歩いていくときっと「いい場所」につながる
どこにも行けないけど、どこかにいける

そうやって適当に歩いている
いつも

路地はすぐに行きどまって突き当たりの場所はガラスと白い木でできたお店だった
オレンジ色のタオルとかきみどり色の石鹸とか
フレグランスボールとか
ふかふかの毛羽だったバスローブとか。

板ガラスみたいに少しだけゆがんだ窓のむこうに
きれいなみどりの芝生が見える
少しだけほこりがついて曇った窓枠にふちどられて
いい絵だな、とあたしが思う

なかにわ。

旅行鞄の中からカメラを出して
わたしは芝生の上に足を投げ出して座った
見上げた空が青かった
雲の白とビルの白と空の青と、その間をかいくぐっていく電線の黒い導線

それならそれを、どう切り取ったらいいだろう

シャッターが押せない

見上げては構え、見上げては構え
やっぱり空は青くて
芝生の上に投げ出されたスカートの裾のひだひだとか
そんなものまで全部色の中に舞った

また空を見る

ぼうっとしたたくさんの色の線が走ってる


・・・・・・・・・・虹。

そういえば電車の中で天気雨が降っているのを見た

カメラを構えたままずっとずっと色の線を追いかけていくとそれは
わたしの背中の後ろのほうにまで続いていて、そうして、きちんと
もう一本のうっすらとしたかたわれを従えているのも
いつか見えた

(虹はいつでも2本出るんだよ)

誰が教えてくれたのか忘れたけど。


そうして目を覚ました
なんだかとても
いい夢を見たような気がした

そういえば
あのときも虹を見た。
去年
あなたがお墓に入っていった日の、帰り道
東京駅を出て行く電車の中からわたしは
虹を見た。


生きていたのは、すこし蒸し暑いくらいの春の日の午後3時で
ベッドの上で、わたしは毛布のかたまりの中に座って
うすぼんやりとした目で、昨日を手繰り寄せていた

わたしが考えているのよりももっとただしく、年月は巡っているのかもしれない。

季節をトレースしながら
たくさんの記憶を、またその上に重ねて
ずっとずっと下まで透けて見える、極薄のトレーシングペーパーみたいに
だけど、それでも、
あるひとつの厚みを加えながらぐるぐると
機械的なまでに、規則ただしく。


ただしいことは、絶望的なくらいにつよくて、そうしてかなしい。


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pm5:30

選挙に行く。

二十歳をすぎて与えられたこの権利をどうしても
行使しなくちゃいけないと思っているのは、それが友達の記憶に結びつくからだ
生まれてこの方日本にずっと住んでいるけれど選挙権をもたない彼は、
与えられてる権利くらい使いやがれと「わたしたち」に向かって怒っていた。
それだから、
それから二年経って、与えられたこの権利を
わたしは見ないふりをすることがどうしてもできない。

なぜか選挙があるときわたしはいつも具合が悪くて
熱があったり臥せっていたりした。
ここ数年はもうそれは日常茶飯事のできごとなので誰もたいして気にしないのだけど
(とりあえず眠るかたちに入っていれば耐えられる程度の日常的病臥)
ただ、うちをでて、外出するとなると話が別になっていくから
それだから、わたしは毎回、投票所まで父親の運転する車ではこばれてゆく。

10日ぶりに外に出てしまった。

露出する皮膚がびりびりと痛くてあたまがぼうっとしている
あちこちが炎症を起こしているので微熱
でもいつもとおなじ
ただ外に出て行くことだけがちがっていて

わたしは今年はじめての夏の靴をはいた
底がぺたんこの軽い軽い、臙脂色の靴

投票を終えるといつも少しおかしな気分になる
あんなに思いつめて求めて求めて喧嘩しあって
たくさんの思いと行動と記憶を背中に抱えて
そうして最後に行きついていくこの場所で行われる行為が、どうして
こんなにカンタンなことでしか、ないんだろう

ことばにすればそんな思いかもしれない

からっぽになった手で会場を出て行くとき
熱っぽい顔からなにかが外の空気にむかって
ゆるゆると溶けていく気がする

足元は軽い

夕焼けになりはじめた外の世界をみて、わたしは
きれいだ、と思った


見ないままほとんど散ってしまった桜のかけらがあちこちにこぼれてた。



2003年04月07日(月) 一年

一年経ちました。
365日。

短かったけど長かった。
二度とくりかえしたくない数日間、数ヶ月間を含んだ
365日。

長かったな、と思うのは
わたしがまだコドモでしかないからなんでしょうか、
わからないけれど。

日記を書き始めてすぐに
なぜか
サトくんが死んで
灰になった。
しろい骨になった。

わたしは無意識にあなたのあとを追いかけていたのに、その影が
ぽっかりと消えてなくなってしまった空白。
さびしいとかかなしいとかせつないとかではなくて
怒鳴りつけたかった、誰かを。
勝手に行ってしまったあなたに対して。
勝手に行かせてしまった、わたしに対して。
誰もが、そばに居たけど、そばに居なかった。

夏の陽射。
ぼろぼろだった脚。

おひさまは、あかるくなんてなかった。
目にしみるそらは、とてもとても青いけど
肌をなぜた風はやわらかいけど
だけど
ぽっかりと穴が開いたところはふさがらなくてわたしは
かなしいという気持ちがわからなかった。

時間が止まったまま。

いつかあなたの年齢を超える前に消えてしまいたいと思う自分がしっかりと生きている。
残念ながら、そこを払拭することが出来ないまんまに
夏が過ぎて秋が過ぎて冬が過ぎて
思う存分の寒さを味あわないうちに
菜の花が黄色い絨毯になって路線をうめつくし、桜なんかが咲いて
あなたにあげた蒲公英の花がちらほらと咲き始めている。
そういったことが、焦点をずらしたみたいに滲んで

一年なんて短すぎて長すぎる。

庭に出たら花梨の花が咲いていました。
サーモンピンクの強い色をした、やわらかくてまるい
つぼみ。

毎年、この木はここでこの花を咲かせていたと思うのに
わたしはこの春になってはじめてその存在に気が付いて
カメラを取り出す、手の力がなくて
なにかをきれいだと思う、こころが麻痺して

画廊が終わりました。
本当のところ何も語ることのないじぶんを
鎧いながらその場所にいることはむつかしかった。
その場所にいていいのかひっきりなしに自問しなくちゃいけないというのは
ばかげたことだけと切実に止められない言葉だったから。

ただ、引っ張り出してくれたひとにはありがとうを言いたいです。
くるしかったけれども。


あと5日です、
あと5日で
一年が経ちます。

あなたがいなくなってから
一年が経ちます。


365日前にあなたがいたということをわたしは憶えてるから
今、あなたがいないということも
同じだけの重みで知り尽くさないと前には進めないのかも知れないです。
25歳。
サトくんは行き先を見失ってわたしの目の前で泣いていたけど
おんなじように
わたしも今、たぶん、
あのときのあなたと同じように泣いています。

手探りしてもなにもぶつからなくて。
明日がくるのがそらおそろしくて。

それが膨れ上がって、膨れ上がって、どこまでも大きくなって
この身体をおしつぶすくらいに大きくなったら
わたしは
あなたの居るところにひっぱられていくのかな、と漠然と
何度も何度も考えました。

だけど
365日たった今、わたしは生きていて
あなたの笑った顔のことを思い出したくて
それから、思い切り泣きたくて
でも泣く先が見つからなくて
泣いたら終わりになるような気がして
ならず

ただ

支えてくれて、ありがとう。


あなたがいなくなってしまったのがとてもくやしくて、それだけで
きれいごとで終わらせられないわたしが、まだここにいました。


365日目の今日に。
サトくんへ。


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真火 [MAIL]

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