麩宇野呟秘密日記
透乎



 行く先

就職先がやっと決まった。
駄目だと思っていた、地元の医院だ。

私の市には、商業高校がある。
主婦もたくさんいる。
たいてい、そういうところから、職員の雇うそうだ。
しかし、今回募集できた、初めての大卒の女の子。
むこうは、それこそびっくりしただろう。
よりによって、無駄に歳を食いキャリアをつけてきた、応募者だ。
賃金は、高く支払わなくてはならない。

「大卒にやらせる仕事ではない」
「あきると思う」
「勤務時間が不規則だ」
「給料は安い」

そんな事をいわれ、面接を一度断られた。
しかし、私はそこで働きたかった。
内定していた会社には、どうしても行きたくなかった。
地元で働く事により、自分の時間を持ちたかった。
空き時間を活用して、文章を書きたかった。

私は食い下がった。
どうにか、面接までこぎつけた。
しかし、また同じ事を言われ、やんわり断られてしまう。
でも、そんなの承知の事。
駄目でもともとと思うと、何でも強くなれる気がした。
そのマイナス面は、私にとって魅力だと伝えた。
今まで、応募先には決して言わなかった「自分の時間がもてる仕事をしたい」という事も伝えてしまった。
嘘はつきたくなかった。

結果、採用の電話がきた。
嬉しかった。
うれしかった。

ああ、内定するってこんな嬉しい事なんだ。
そのとき初めて知った。
うかれてしまって、そこの医院を受けると話た相手計5人にいっきに「受かった報告」をしてしまった。
うかれすぎだよ、自分。
あとで、反省した。
ひとりは、これから教習学科の授業だと言っていた。ごめんね。

心配事がないわけではない。
給料が思いっきり安い。
いくら地元にいるとはいえ、同級生よりかるく5万は低い。
架けてみよう、12ヶ月。相当な額の差がでる。
親がいないと、暮らせない……かもしれない。
将来、結婚しないと暮らせないかもしれない。結婚したくないのに。

同期がいない。
若い子が少ない。
それはそうだ、地元のおばんさんを中心にやとっているのだもの。
同期という存在がどれだけ自分の支えになると、ゼミに入って知った私にとっては、けっこうこの事実は苦しいだろう。
今から不安だ。
おばさんと、話をあわせていく自信もないし。
でも、仕方ない。
がんばるしかないのだ。
幸い、友人がひとりこっちに引っ越してくる。遊んで貰おう。

いろいろ、心配事があるけれど、それでも私は「文章が書きたい」その信念で仕事を決めた。
そして、後悔はしていないし、堂々と人に言える。
それが、それだけが、私の唯一の支えであり、目標である。

さあ、土台はできた。
あとは、ただひたすら頑張るだけだ。

2003年03月04日(火)
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