|
|
■■■
■■
■ 大統領の声
いつものようにネットでニュースを読んでいたら、 「アフガン攻撃をめぐるブッシュ大統領の演説全文」が掲載されていた。 どれどれとクリックしてみたところ、私はその翻訳にいささか首をひねってしまった。 「我々は、世界の一致した意志によって支えられているのだ」
アメリカの歴代大統領は、往々にして雄弁家たちである。 演説はアメリカ建国以来、移民の寄せ集めとして構成された、 アメリカ人たちの意志を統一する最良の手段だった。換言するなら、 アメリカの大統領たるもの、演説で国民を煽動せねばその地位は危うくなる。 だからリンカーンもケネディもクリントンも(もちろんブッシュのお父さんも) かなりの雄弁者であった。
そこで例の演説。 日本語訳はとても忠実に訳されていたが、肉声としての熱意に欠ける。 そんなとき、私は原文に立ち返る。 "We are supported by the collective will of the world." 「われわれは世界の集結した意志によって支えられている」とでも言えば いいだろうか。つまり、バラバラの国家が共同体的、集団的意志統一を持って いる、と表現している。いやはや、ブッシュさん、言ってくれますねーと苦笑 してしまった。これじゃぁ、世界各国もアメリカ国家だと言っているようなもんである。 ある意味、暴言。
アメリカという国は多人種国家であり、自由と個人主義的な性格を持つ。 日本のように古くからの文化や慣習が浸透していないので、意思統一を図るのが もっとも難しい。それ故、アメリカはオリンピックにおいても戦争、政治におい ても、まずは「コンセンサス」を取ろうと躍起になる。 意思統一の基に成り立つアメリカは、今度は世界に同様の意思統一を迫ってくる。 それはとても「アメリカ的」なやり方だ。
おまけに"In this conflict, there is no neutral ground." (この戦争に中間的立場はない)と宣告している。 つまり、「アメリカの側に立たない者は、すべて敵とみなす」と脅迫しているのだ。 永世中立国的立場は許されないする。 報復に荷担するか、そうでないか、傍観者的立場はないという。
世界が「アメリカ」と「アメリカ以外の他者」とに分断されつつある。 アメリカ国民の怒りや恨みの深さは理解できるが、 アメリカよ、世界を「アメリカ的」にするのはやめてくれないかな。
2001年10月10日(水)
|
|
|