オリジナルというか、自分の身に起こったことを基にして小話が書きたくなるんです。 6周年小説も書いてますよー。ちょこちょこと。
それで、ですね。 今回、適当に書いてみました。 実話半分、フィクション半分。 シリアスというかほのぼのです。 主人公は私がモデルです。 読みたくない人はバックプリーズ。
ではどうぞ。
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雪のない冬は冬じゃない。
そんなことを友人に言ったら、出身地の違いだよね、私は雪がない冬が普通だからそんなことは思わないけど、と言われた。
そりゃそうだ、私は雪がある冬が普通なんだもんね、と言って、雪が降りしきる外を見つめる。
車、アパートに置いてきてよかった、とボンヤリ思った。
いつだったか、実家に帰る途中で見た都会の景色は、私の季節の感覚を狂わせた。 雪のない地面。建物の中から見た町は、あたたかい光が注いでいた。 こんなの、秋じゃないか。教科書で、日本は四季がはっきりしてるって習ったけど、じゃあここは日本じゃないって言うのか。なんて、アホなことを考えたのも懐かしい。 けれど、じっと見れば、人はコートを着てマフラーもして手袋もしているし、街路樹に葉は残っていないし、風はそれなりに冷たいし、空は秋よりも抜けるように青かった。 雪がなくても冬は訪れている。ちゃんと、訪れているんだ。
でもやはり、そう分かっていても、私は雪がないと落ち着かなかった。
「うわー、もうあんなに積もってる。しんじらんない」
愚痴る友人の視線を追うと、なるほど、確かに駐車場に止まっていた車がほとんど見えなくなっている。 雪に隠れてしまっているようだ。
「除雪車、出るんじゃないかなー、やっぱり」 「年末でも、除雪車って出るの?」 「出るよ。これだけ降ったら。この街はどうか知らないけど」 「ふーん」
タイヤ交換をしたのは11月の中旬。 今の今まで雪のゆの字も感じられなかったのに、ここ数日は、雪起こしの雷が昼夜問わずに鳴り続け、自分のパソコンに雷が落ちやしないかとビクビクしていた。 で、大晦日を明日に控えた12月30日。 この日は昼間から直径3cm以上の塊となった濡れ雪が、ボタボタと降り続けていた。
私は、外がそんな状態になっていても、ずっと友人の研究室で論文を書いていた。 年末年始は大学の暖房は切れてしまう。かといって自分の研究室では石油ストーブは使えない。というか、無い。電気ストーブなんてこの季節、大きな研究室を暖めるには役に立たない。 だから、石油ストーブがあって、同じように論文を書いている友人の研究室を間借りすることにしたのだ。
換気ついでに窓を開けて、外へと手を伸ばす。 手についた雪の、その粒の大きさがまるで発泡スチロールを砕いたようで。 実家の雪とは随分違うのだということを、今年も変わらず思い知らされた。
それでも、去年までは、雪があれば落ち着いたはずのこの感覚。 なのに、今年は何かが違うと感じていた。
この気持ちは一体何なんだろうか。
「・・・降らないかなー、雪」 「何言ってんの、これ以上降らせるつもり?雪が大好きにも程があるよ」
雪、と聞いて、私が好きな雪はこんなんじゃないとばかりに否定した。
「違うよ。これは発泡スチロールだもん。きっと、空で誰かが発泡スチロールをミキサーにかけて、ばらまいてるんだよ」 「ああ、実家のはパウダースノーってやつだっけ?」 「そう、だと思うよ。こんなに一粒がおっきくないもんね。まあ、雪だるま作るとか、雪合戦するにはこっちの方がいいんだろうけどさー。やっぱり温度が高いんだね、こっちは」 「これで温度が高いの?これ以上寒いってのが想像できないんですけど」 「でも、肌が痛くないしさ。やっぱり温度高いよ」 「や、肌が痛いくらい寒いってどんだけですか?」 「え?んー・・・空気吸ったら鼻の中が凍る感じ?」 「いやいや、それもわかんないから」 「じゃあ、朝タオルが凍ってるとか」 「それもわかんないから。てかタオル凍るの?!」 「うん。まあ、そのくらい寒いってことかな。最高気温がマイナスなんてザラだし」 「うへー」
天気予報を見て、冬に気温が+を指すことに違和感を感じることがある。 それは、私の実家の町の気温がよく−を指していたからに他ならない。 私の実家は雪国である。山の中に暮らしているわけでもないが、都会かと聞かれれば激しく首を横に振るだろう。 うちの町は僻地だ。ど田舎なのだ。なんせ、ファーストフード店と呼ばれそうなものは車で40分かけたところに行かないと存在しないし、ファミリーレストランは一種類しかない。つい最近まで、ファミレスには和風専門やら洋風専門やら中華専門があるなんて知らなかったぐらいだ。 ・・・さすがにコンビニは存在するが。
別にそれをいやだとは思わない。 だって、そうでなくてはつまらない。 あまりものがない方が、いいこともある。
「そういや、さっきお風呂入りに寮に帰ったとき、入口のとこに誰かでかい雪だるま作ってたよ。あと、駐車場のとこにかまくらが作りかけだった」 「へー。そういう人も居るんだねー。かまくらかー、いいなー。入りたいなー」 「いいなーじゃないでしょ。はしゃぎすぎ。うちら今論文でキュウキュウとしてるんじゃなかったの?」 「あはは。してるしてる。てかヤバイもん。自業自得だけど、あと一月あったらいいなーとか思うもん。それか、精神と時の部屋が欲しい」 「まあねー。私は能率アップするドラえもんの道具が欲しいな」 「あー、そんなのあったなぁ。そっか、そっちのがいいね」
無い物ねだりなのは分かっていた。 分かっていても、こんな馬鹿話をしていないとやっていられないのも事実だった。
そういえば、と友人が切り出し、話題は再び雪へと戻った。
「ね、かまくらって、中で鍋したりするんでしょ?融けて天井抜けたりしないの?」 「うぇ?えーっとぉ・・・し、しないんじゃないかなぁ。かまくら作ったことないもん」 「ないの?雪国なのに?」 「ないよ。もどきはあるけど、あれ、かまくらじゃなくて、囲いだったし」 「囲い?」 「うん、囲い」
小学校低学年の頃だったろうか。兄と兄の友人とでかまくらを作ろうと思って外に遊びに出かけたのだ。 しかし、出来上がってみれば、円を描いたような高さ40cmほどの囲いにしかならなかった。
「作り方知らなくってさ。下から壁を作っていったら、結局そんなことになっちゃった」 「あはは、なんか、あんたらしいねぇ」 「えー。ちょ、それどういう意味?」 「そういう意味」 「はー、そうっすか。そういう役回りっすか。ま、でも多分そのくらいの湯気なら、天井に行くまでに冷えて水滴になって、壁についても固まっちゃうよ。こたつだって、あれ半分押しくらまんじゅうで暖まってるだけだし。みんなちゃんと防寒具着てるし。まあ、外よりは暖かいかなぁ。雪壁は保温効果あるもんね」 「入ったこと無いくせに」 「ん、でも、そんなもんだよ」 「そんなもんですか」 「うん、そんなもん」
囲いでも十分風は防げて暖かかったしね、と答え、コキコキと首を回して凝り固まった肩をほぐした。
「さて、論文書いちゃいますか・・・」 「書いちゃいましょうか・・・てか、終わるかな、これ・・・」 「それは言わないでちょうだい」
げんなりとしつつも、年末年始返上でするはめになったのは、自分の責任だ。自業自得という奴である。 こればかりは自分以外を責めるわけにはいかなかった。
「雪かぁ・・・」
窓の外を見て、思い描くは粉雪。
あの雪に触りたい。 でも、現実に触れるのは発泡スチロール雪。 それがすごく、もどかしかった。
(なんだったっけなぁ、この感じ)
一つため息をつき、私は論文へと向かい直した。
***
論文提出後、ようやく訪れた正月休みを利用して、実家に帰った。
バスを降りて、歩き出して、ふと気づく。 足もとが軽い。今踏んでいるものは水で出来ているのに、乾いているように感じる。
少し掬って、感触を確かめた。 柔らかい、粒が細かい、粉のような雪。 触るとすぐに融けて、水になってしまった。 もう一掬いして、今度はギュッと手を握って固める。 まるで、小麦粉を握ったような感触だった。 ああ、私が求めていたのはこの雪だ。この雪に、ずっと触りたかったんだ。
寒いのが苦手な母には申し訳ないけれど、私はやはりこの雪が好きだ。 そしてこの雪は、厳しい寒さがあってこそなんだ。 寒すぎて肌が痛いけれど、それは私の気を引き締めてくれる。
やっぱり私の冬は、この雪がないと始まらない。 この、粉のような、綿菓子のような雪を作り出す、この肌を刺すような空気がないと始まらない。
ほう、と煙のような真白い息を吐いて、私はゆっくり空を見上げた。 相変わらずの曇り空。 この地の冬はいつもこんな調子だ。 青空なんて、なかなかお目にはかかれない。 それでも、それが私の普通。私の冬の、普通だ。
「ただいま」
ただいま。 突然ですが、私はあなたたちが大好きです。 良いことばかりじゃなくて、面倒なこともあるけれど。でも。
「大好きです」
この空気が、雪が、大好きです。
そこまで思って、ようやく気づいた。 あの、年末に感じたおかしな感覚。 あれこそが、郷愁だったのだと。 ようやく、気づいた。
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はい。思ったことを全て詰め込んでみました。 実家に帰って、雪を触って、やっぱりここの雪が一番だなーと思ったり。 つるんつるんですけどね。地面は。 昼の時点で−7℃な地域ですけどね。で、今日は朝−13℃だったとか。さみーっつーの。(笑) それでも好きだと思ってしまうのは、仕方ないですね。性分です。 ちなみに、ウチの実家は盆地なので、夏は暑くて冬は寒いです。 夏の最高気温は37℃まで行くときもありますし、冬は先ほど言ったように最低気温が−10℃付近を行き来します。 最高気温も氷点下ですよ。もちろん。 なので雪は降っても粉雪で、今住んでいるところみたいにドカドカ降りませんから、量は少ないです。
発泡スチロール発言はよくしてます。環境大臣に連絡だ!とか馬鹿なことをほざいています。
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