白石加代子の『百物語』行ってきました…観劇予定にも入れてなかったのは、チケットを買ったのが先月の24日だからです…。『I Love You〜愛の果ては?』を観に行ったときに貰ったチラシの中に『百物語』が入っていたのが運の尽きというか…憑き…。(^^;先月…という言い方をすると、ちょっと前のことのような気になりますが、1週間ほどしかないのに、チケットを買うなってーの。しかも、ネットで探してる辺りが…ものぐさ。(^^; ま、そういう事情なので(笑)1F16列11番という…後ろの方でしたがアートピアホールなのでそんなに大きくないし、11番とはいえどセンターブロックの端なので、観づらくもなく…白石さんの舞台はなまじ、前の方だと非常に怖い思いをするので(By『ミザリー』経験者は語る)このくらいがちょうどいいのかもしれません。 …順番が前後してしまいましたが、この後に観劇記録に入れておきたいと思います。 で、どうだったかといえば…今までのラインナップもホラーだったり、サスペンスだったりしたので、『百物語』だからさぞかしぞっとする雰囲気が味わえるのだろうと…思って観に行ったのですが、予想に反していっぱい笑ってきました。最初のご挨拶から白石さんがとっても可笑しかったです。宣伝も忘れずに…でも、『源氏物語』は東京のインフォメーションだけでした。やはり、名古屋公演はないのか…。 最初の『開いた窓』(都築道夫訳)はさすがに最初から飛ばさず、『百物語』だけど、ウィットのきいた所があって『ああ、なるほど』…と思わせるものがありました。照明もそれにあわせて不気味な演出の一端を担ってましたし。セットもほとんどなく、L字のベンチと両開きのドアだけ。それだけしかないのに、3話共通してうまく使用されてました。(3話目はベンチはなかったですが…)表情やしぐさ、声だけで15の少女やらおじさんおばさんを朗読しわけるのはさすがだとも思いました。ラストのそりゃ、邪気のない笑顔だってあの効果では不気味に映るでしょう。 後の2編は怖いといえば怖いのかもしれませんが…『銀の仮面』(倉坂鬼一郎訳)もその点では納得しましょう。真意の見えない他人の行動こそ怖いものはないですから。話的にはこれが一番好きかもしれません。何気ない描写が『朗読』という形を取るとすごく生きてきます。まあ、白石さんですから『朗読』に留まらない部分もあるんですけど。 以前、フジテレビのアナウンサーが朗読劇をやってたのをTVで観ましたが…白石さんと比べると棒読みに等しいとさえいえるでしょう。アナウンサーは感情を殺したしゃべり方なので、言語は明瞭に届くかもしれませんが、感情が消されたら、朗読は面白くありません。 白石さんの『朗読劇』は『源氏物語』にしろ、『百物語』にしろ、情感たっぷりだからこんなにも可笑しいし、ぐいっと引き込まれていってしまうのでしょう。そういえば先日、市村さんが『オモチャ箱』の時に『演技をしてる時に劇場の時間が止まる瞬間がある』ってなことを言ってらしたのですが、まさしくそんな感じを体験することができます。しかも、時間が止まるだけではなく、空気も止まるし。あれだけの人数がいて、劇場内が静まりかえり無音を体験できるってのはそうそうあるものではありませんが、白石さんの舞台ではそれを何回も体験してます。だからこそ、リピーターになってしまうのですけどね。(;_;) で、そういうものを見せられて否が応にも期待は高まります。だって、『開いた窓』がオードブルだと仰ってたからには最後の『踊るお人形』がとっておきのスペシャルってことですよね?でも…『踊るお人形』はどうだったかと言えば………………………獏さん、遊んでますね?そして、そんな獏さんのモノマネをする白石さんも遊んでます。それもめいいっぱい!確かに、楽しかったです。面白かった!とっても笑えた!獏さんも嫌いじゃないというか…長〜いシリーズには手をつけてないけど(笑)、あまりに売れすぎた本は敬遠しちゃってるけど(爆)、短編や読みきりはそれなりに読んでるので、わりと好きな作家さんに入るのだと思う。だから、獏さんがホームズを調理する…と聞いて楽しみに出かけていったものだけど。でも、私は凍りつくような恐怖を期待していったのに…。観劇後の満腹感はコメディのそれだった。……満腹になっておきながらまだ文句があるのかと言われそうですが、料理で得られる満腹感とデザートで得られる満腹感は違う…と言っておきます。 『百物語』も70話目にもなると怖いだけじゃだめですか? 観てない方には分からない内容ですみませんが、だって、命…だって、メッセージのミスリード…他のどの探偵がやってもいいけど、ホームズにだけはやられたくなかった。 大体、のっけから変でした。『開いた窓』と『銀の仮面』では黒い洋服姿だったのが、『踊るお人形』では和服。しかも、下は地味な色目の着物なのに、上に羽織っているのは…(^^;小さな子供が着せられてそうなかわいい花柄。70話目の記念の衣装だそうです。…白石さんは声高に『私は納得いたしておりません!』って叫んでましたが。(白石さんにとっては叫んでるうちに入らないのかもしれないけど) 最初はかわいらしい女の子の朗読だったのに歳が115…と出てきた途端に慌ててそでに引っ込んでしまい、車椅子を持って出てくる…。そして、気を取り直して腰がほとんど直角に曲がった老婆に扮してやり直しなんですが…『今年でちょうど115歳になります』<ちょうどじゃないやん。 『ちょうど98年前のことでした』<全然、ちょうどじゃないやん。 などと心の中でツッコミながら見てた時点で間違っていたのかもしれません。 ホームズ登場のシーンではホームズ人形が登場しましたが、『玄関に大男が立っている』というような描写でも人形は座っていました。<立ってないやん。 …と突っ込む。挙句の果てには命……(>_<)白石さんが人形の形を再現した時からいや〜な予感はしていましたが、そんな予感は外れて欲しかったよ。 怖い話の中にほっと笑いを漏らせる箇所があるというのは心が和むものですが、最初っから最後まで笑いっぱなしというのは…しかも、ホームズ……。シャーロキアンではないものの、それなりに彼の名探偵には思い入れがあります。今まで見た中でいちばん情けないホームズ君かもしれません。最後にはホームズ人形にも命をさせてしまって…シャーロキアンからクレームは来ないのでしょうか。まあ、ほんのお茶目といえばそうなのでしょうけど。 そういう楽しい舞台でしたが、『百物語』=恐怖夜話…と思っていた私が間違っていたのでしょうか。それとも、今の世の中には恐怖することよりも笑いが必要という、獏さんたちの配慮だったのでしょうか。…だとしたら、あの経済の奈落の底をぶち抜いた私利私欲の固まりの閻魔のせいですか!? 楽しいひとときは過ごせたけれど、どうも納得がいかないところがありました。
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