★三崎亜記。『となり町戦争』

非常に不思議な雰囲気と透明感で満たされている。
淡々と「戦争」は進むのだ。

最初の「貼り紙」を見て、勝手に「こういう展開じゃないの」と考えていたのを、
見事に裏返された。
まったく違う次元といえばいいだろうか。
あちこちであらすじを見て、もしかして「バカバカし系」なのだろうかと
思い込んでいたのだ!(恥
ミステリでもエンタメでもなく、純文学である…
そんな高いところにあったのである。ああ。
(純文学苦手)

もし、もっと静かに落ち着いた環境で読むことができたなら、
戦争の音も、光も、気配も、もっとワタシの中に入り込んで来ただろう。
それほどまでに感覚的なストーリーゆえに、たぶんこの作品は賛否が分かれ、
読み手の考え方、価値観などによって感想のギャップが激しいのでは、
と思った。

結局何がいいたいの?と言う人も多いだろう。
「戦争」という非日常が日常にならなければ、気づかないのかもしれない。
それほどまでに、戦争は遠い世界で起きている。
登場人物たちは、どこかコミカルにも思えるが、やはり本物の「戦争」
なのだから、どこまでも生と死とが隣り合わせなのである。

「戦争は善か悪か」「賛成か反対か」というレベルを超えたところで、
本当の戦争は行われているのだ…などなど、いつになく真面目に
考えさせられた本だった。

ミステリ好き(解決とか結論がないと嫌な人)にはオススメしない。
2006年01月13日(金)
★森絵都。『アーモンド入りチョコレートのワルツ』

森絵都さんの短編集。
「子どもは眠る」「彼女のアリア」「アーモンド入りチョコレートのワルツ」の3編が、それぞれシューマンの「子どもの情景」、バッハの「ゴルドベルグ変奏曲」、エリック・サティの「童話音楽の献立表」にのせて送られる。
主人公は、みな中学生。

誰もが経験した、「あの頃」を淡々と綴っている。
ただ懐かしいだけでは切り取ることのできない、不可解さを含んだ、「あの頃」。
シチュエーションは違えど、きっとオトナはみんな、あの切なさを知っている。
知っているのに、あまりにも遠いその記憶をたぐり寄せられない、もどかしさ。
この本を読んで、自分はいったい中学生のときどうだったのか?と目を閉じてじっくりと思い出したくなった。
私もきっと、知っているはずだ!
あの年代の記憶はどこに? もどかしい。

個人的に好きなのは、「子どもは眠る」。
子どもたちの力関係は、こんな些細な、しかも訳のわからないことの連続で、しかもそれはある日さっくりと裏返る。

どれもピアノ曲だ。ピアノをやっていたというのに、知っているのは「子どもの情景」のトロイメライだけだなんて、ちょっと情けないかも;^^
2006年01月02日(月)
★恩田陸。『蒲公英草紙〜常野物語』

恩田作品自分としてはイチオシ「光の帝国―常野物語」の続編なので、ハードを買った。

懐かしく、キラキラしたいとおしい日々の物語。鮮やかな人物描写が素晴らしい。
人間の記憶とはきっとこういうもので、ずっとずっとあとになってから光るものを取り出して、そっと眺めるものなんだろう。

物語そのものは、あまりにも切なく、さらに一転したラストは、希望の光があまりにも薄い時代のせいで、胸に重くのしかかる。

それでもやはり人は生き続けるのだ。
2006年01月01日(日)
By ちゃいむ

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