まったく予備知識なし。あるのは中居くんのニヤニヤ顔だけ(笑)。 当時絶賛され、映画化もされたこの上下巻の長編だが、 絶賛されると読む気を削がれてしまうというやっかいな性格なので 今まで読んでいなかった。
3部構成になっている。 1部は被害者とその家族側からの、2部は犯人たち側の、 そして3部はその後の展開を犯人以外の登場人物の目で。 宮部さんは本当にうまい、と思うのは、すべての人間の 目線が本当にていねいに書かれていることだ。 殺人事件について思うなら、「誰が、何故、どのように」 という部分はとても今までの小説で大切にされていたことだが、 犯人はともかく、その周りにいる人間、巻き込まれた被害者や その家族、そして加害者とその家族をここまで書くかというほど 書きこんでいる。 それがために、読み進めるのが苦しい。 リアルなのだ。 巻き込まれた人間は、多かれ少なかれみんな傷を負っており、 その傷が癒されることは長い長い時間を経たとしてもありえない。 ただ、心の奥底に折りたたまれるだけなのだ。 そしてその心のひだひだに触れるのが、読んでいてつらい。 亡くなってしまう被害者も…… 世間でもつまらないことで殺されてしまう事件が後を絶たない。 そういった被害者の気持ちを推し量らされるような思いが なんともやるせない。
そして、何故この小説のタイトルが「模倣犯」なのか、 それはラストに明かされる。 その部分だけ、そこだけが唯一の救いの場面だ……。 |
2004年03月21日(日) |
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