カゼノトオリミチ
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おはよう
球根の芽が顔を出して
まだ痛い頭は
うす水色の朝の風で 洗われる
少し春だよと
通り過ぎる三毛ネコ
こころ からっぽにしよう
シジュウカラの声
だから
ひたすら てしごと
てしごと
頭がダメなら手を動かす
何の足しにもならないけれど
いいの それでもいい
こぼれおちる 砂時計を
ただ みているのは
ツラスギル
てしごと せっせと
はるのあさ
そんなことに
そんなことに時間を
大切な時間を 使ってていいのか
ほら ほそい ほそい
砂時計の隙間を
こまかな時のカケラたちが
すり抜けてゆくよ
犬の頭をなでたり
太陽を見つめたり
細かいお金を手にしたり
色糸をたぐったり
指を水に浸したり
その間にも 時間は過ぎてく
日常 生活
今 ここに居ることに感謝します
時の砂が
流れゆく この瞬間に
誰かを愛している こと
それがいちばん
そんな気がする
それで許してほしい
そう 風が吹いて
鼻先 かすめた うすむらさきの
ニオイ
かなしいような
ココロ ちいさく踊るような
見つけたよ
遠い国からきた
春のニオイ
もうすぐだね
あがったり さがったりの毎日
三寒四温の その先に
今年もやってくるんだね
幾重にも畳まれた日々の
ずうっと下で眠っていた
春のキオクが
ムネの中で 目をさます
大丈夫
わかるよ
つめたい北風に吹かれても
ほんのいっぽんの
風の糸が
うすむらさきに うるんでいるから
思いがけず
暖かい雨に とまどい
土と 草に 触れて
春の足音 聴こうとしたけれど
キーイ キーイ
ヒヨドリが笑う
いえ私は確かに 春の裾先
感じましたと ひとりごち
アジサイの鉢の根元
ラベンダーの灰色の枝に
細かい雨の糸
ちいさな芽吹きを 見つけたよ
終わりも 始まりも
やってくるもの 抗わず
ある意味 貪欲に
終わる事さえ 恐れずに
ただ淡々と 行きなさいと
ヒヨドリさんは 言う
キーイ キーイと
ちょっとうるさすぎだけど ね
natu
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