カゼノトオリミチ
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お湯の中の 小さな 無数の泡
指で摘まもうと 何度も はじけて
頼りなく さ迷いだして 消えていく
一度でも つかめた事 あったかな
それが 小さな願い事 だったとして
お湯の中には それだけ無数の 泡のような
自分勝手な 願い事ばかり
素足のうぶ毛に はりついてるのに
つかもうとすると 逃げてゆく
ブクブクと 唇をお湯につけて
つぶやいてみる
シアワセハ シチブンメガ チョウドイイ って
ずいぶん なんだか 自分でも
ココロが か細くなったような 気がするよ
暖かく 行く手を
力強く 照らすのは 太陽
寡黙に 穏やかに
行く道を 闇から
浮かび上がらせるのは 月
それらは ココロのなかに いて
探した時には そこにいて
求めれば 輝きだし
手を差し伸べれば ココロで 微笑む
冷たく てやさしい 少し さびしい
ワタシの中の 守り神
窓辺に お昼前の太陽 あふれてた
満ち足りてた たまご色の日々
なのに 欲しいもの なぜ 増えるの
あれも これも リストアップの メモは もう
いっぱいだよ
カラダが重くて それでも まだ 欲しくて
北風の吹く前に
これでは ここを 発てないよ
蒼い空は そろそろ もっといじわるな
氷の風で 責めはじめるよ
よくばりな おいてきぼりの わたり鳥
たかいたかい 空を 飛びたいのに
丸くなった 身体を ゆさゆさ あしぶみ
ねぇ 悲しいよ
もう やめようよ
ビルの向こうが オレンジ色に 染まるより前に イチニチ が はじまる ベッドにすわり 頭には 漬物石が
ココロを どこかに 捨ててしまいたい 今日という日を 消してしまいたい
真っ暗な 台所で 炊飯器のスイッチを 入れてそして のろのろ イスにたおれて フセって
私は たまごいろの 刺繍糸を刺している 春のユメ みている
あの角を ランドセル背負った 少女が くるり くるりと たまごいろの スカートで 足取り かるく 曲がって 消える
黄金色に輝いた 帰り道の人たちの より添う影が ながくながく 伸びて
歩くたびに 置いてきたはずの 記憶が 背中で ゆらゆら揺れているのが みえる
そろそろ 出発します ピイイイ それは 列車ではなくて 炊飯器の 炊ける音
朝が来て また 夕が来て 若草色の 糸を刺す時 また 若草色の ユメをみる きっと ひだまりで はこべを摘む ユメ
natu
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