カゼノトオリミチ
もくじ|過去|未来
山のむこうに黄金色の夕陽がかがやいて
川べりに小さな闇が生まれる
くねった流れには
小さくさざ波ふるえる
オレンジ色のまあるい柿の実か
線香花火のような固まりが
じじ と呟やき 川のほとりに落ちてゆく
冬の冷たい花火がしずめば
いちにちは終わり
今頃は
ホームで電車を待っている
紺色のコートの背中を風が追い立て
ドアの向こうの安堵だけ
思い描いてる
足元の川底には
いまだ熱い名残が横たわり
明日の日の出の頃には
凍りつき ようやく眠りを得るのだろう
たそがれは銀ねず色で
そこここに ひっそり闇が立ち上る
いちにちの終わりへとみちびく
12月の冷気にまじり
静かにコートの襟に舞い降りる 夜の粉を
はらいのけるように
胸を張りブーツのかかとをならし
家路を急ぐ
クリスマスを終え最終コーナーを回った
師走の荒い息遣いが 背中を押しているけれど
いち年が終わっても
私は私で
いち年が明けても
私は 私なのだろうから
桜の木の下で 手を振り
門をまがれば そこから
まっすぐな道が 西へ伸びている
放課後 帰り道
光が黄金色にかがやき まぶしくて
ふたつに結んだ長い髪が揺れた
イエローブリックロード
勝手にそう 名付けていた
いつもひとり 口ずさんで
かばんの中のパンくずも
時には金平糖のようにきらめいて
いま
少しの開放感と自由との引き換えに
空を見上げてため息ついている
今ではこのあたりの風向きも変わった
goodbye yellow birck road
その声は 背中の遠い遠い場所から
耳の後ろから
ささやくように聞えてくるだけ
お下げ髪を揺らして
しあわせは
さむい夜のあったかな白いシチューと
ごちそうさまの声
しあわせは
おなかをみせて ごろんと転がる
小さな生き物の 茶色い毛並みをなでること
しあわせは
いっぱいの お酒
しあわせは
「よい夢 行き」の眠りのきっぷ
夢の中で飛び跳ねて
眠りの粉を散らかした 言葉を フライパンに
のっけて ジャッと炒めましょう
お弁当は夢の中の言葉たち
よく炒まって 今日の糧となるでしょう
駅へと向かう背中に
ぴぴぃ! するどく警鐘が
“反省なさいな”
振り向けば山茶花の垣根の隙間から
小さなシジュウカラらしき
イタズラそうな姿が顔を出しました
“いってらっしゃい”
雨上がりの路上を 朝日がまぶしく照らし
水溜りがかがやいてます
冷たい空気を吸い込んで
みんな 駅へと 歩いてゆきます
さむくてさむくて
まるくなっている背中に
携帯が鳴って それは もろびとこぞりて で
もう 今日の扉を 閉じてしまおうと
思っていたのに 数行のメールの文字
キラキラと 空から言葉が 降り注いだようで
商店街の ささやかなイルミネーションが
目にも 心にも ぼやけてみえる
それは
折りからの 小雨? いえ 寒いと目のはじっこが
にじむんだよね
同じテーブルの上を ぐるぐると
まよってばかりのこともある
でも
どこかに ぶれない想いが あれば
いえ そんな立派なものじゃなくて
こうありたい自分の姿を
あたまのすみっこに 小さくメモしておけば
帰り道で 偶然であった
夜空のまんげつのように
そおっと どこからか
その想いが
じぶんを照らしてくれているような
気がする
ココロのなかに灯る
ささやかな 希望のあかり
手の中の貝を
ぽとんと水面に落とせば
ぷくぷくと 小さな泡を
つぶやきにかえて
しずんでゆく
水底に着いたら 連絡をください
そちらのようすも 聞かせてください
時々は
夢であいましょうね
natu
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