古い魔法
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むかし、まだ富ヶ谷の古いアパートに住んでいたある日、友だちが泊まっていくことになった。 わたしとふたりかさんにんか。親友というわけでもないつきあいだった。 夜も更けた頃、そのうちのひとりが「白玉だんご作ろうよ!」と眠気のひとつもなしに言い放ち、わたしたちは面倒くささのひとつもなしに白玉粉を買い求めるべく夜を彷徨い、ひとつしかないガスコンロで耳たぶの柔らかさだよなんてきっと言って作って、あずきと食べた。 しかし、記憶なんて曖昧になるばかりで、その夜の闇も季節も白玉の味も出来ばえも今となっては思い出せず、夜中じゅう何を喋っていたのかも忘れ、ただ覚えているのは無邪気な閃きのごとき少女の提案だけである。
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