第四話 〜二人で一人〜 - 2003年07月16日(水) 二人はいつも一緒だ。 大きくて、亡き父の後のものを背負う、しっかり者の彼。 小さくて勤勉で、医療に関わる仕事をしている彼女。 もうここの初めの頃からの住人。 この二人はとても独特な会話をし、ユーモアで溢れているので 私もついつい一緒になって、ふざけてしまったりもする。 他の人から見ても、本当に仲のいいカップル。 しかしそんな彼らでも、ほんの数回だが別々で来る時期があった。 そして互いに 「私達は付き合ってる訳ではないよ」 そんな事を言っていた。 そう、まるで自分達に言い聞かせるように・・・ 初めは純粋な恋で始まった二人。 数年が経ち、年齢的にも‘結婚’を意識し始めてからなのだろうか 関係を変えた。 「一緒にはなれない、きっと無理だ・・・」 という現実を受け入れようとして。 多分周囲のの反対にでもあったのだろう。 他にも色々あったのかもしれない。 『無理なんて事はないはずだよ』 まさか私がそんな言葉を投げかけられる筈もなく、 笑っている彼らを見ていた。 それでもお互い親友でいいと言い、良き理解者となってみたり、 別の恋を探そうと強がり、もがいていたり・・・ 時には無理やり嫌いになろうとさえしていた。 「最近ちょっと気になる人がいるのよ」 「色々新しい出会いにチャレンジしようかと思ってさ」 そんな言葉を、それぞれから聞くと なんだかこちらまで切ない気持ちになった。 強く見えた彼の弱さ。 か弱く見えた彼女の強さ。 どちらも心に正直でない言葉からきたもの。 ところが、そんな彼らに恋どころではないほどの けたたましい環境、状況が訪れた。 身内のこと、仕事のこと、両者に降りかかる状況は続き、 どんどん笑顔は消えていく。 また私は、見ているだけしかできなかった。 なんとか二人で元気に見せようと笑顔を作ってはいるものの ある時、ほんのちょっとの言葉を掛けると ほろほろと彼女は涙を流し始めた。 けれど、傍にいた彼はそこで彼女を抱きしめることが出来なかった。 した事は、代わりに抱きしめた私から 彼女を沈んだ目で奪うように連れて帰っていったという事だった。 それから間もなくして、その状況は落ち着き始めた。 そして、その二人に起こった事は 『自分にとって、何が・誰が大事なのか?』 という事を知らしめる出来事でもあったのだった。 そう、二人はようやく気が付いたのだ。 『私にはこの人しかいない』 と。 大きな嵐は去り、穏やかな日々が戻り 本人達は渦中の事などすっかり忘れているみたいに見える。 最近、やっとゴールインするという報告を受けた。 大きく、確実となった愛は 周りの凍てついたものを溶かし始めているのだろう。 始めの頃となんら変わらない雰囲気の二人。 そう、笑いながらいつも一緒にいる。 変わったのは目には見えないもの。 その大きさを改めて知る。 きっと彼らはずっと一緒に笑っていることだろう。 私はそんな二人を心から祝福したいと思う。 おめでとう・・・ -
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